今回は,ツールとして使用する表計算ソフトウエアの基本的な操作方法について演習します.なお,ここではMicrosoft OfficeのExcelを例に解説します.OpenOfficeを使用する人は,対応する操作に適宜読み換えてください.
数値計算法の具体的な解説は次回より行いますが,表計算ソフトウエアの操作は既知として授業を進めます.
(注)表計算ソフトウエアは,厳密な数値計算には向かないとも言われますが,ここでは数値計算方法を体験するためのツールとして使用します.数値計算には,数値計算用のライブラリやアプリケーションソフトウエアなどがあります.
まずは,どんなものか使ってみましょう.
今,みなさんは,表計算ソフトを使ってデータを作成し,グラフ表示を行いました.その操作について説明していきます.
スプレッドシートもしくはワークシートは,表計算ソフトの基本画面です.画面の構成は図1.1のようになっています.
シートは,セルと呼ばれる長方形の入力領域が行と列の表形式になったもので,このセルに文字列,データ,数式などを入力します.シートには,数字で表される行とアルファベットで表される列があります.セルの位置は,行番号および列番号の組み合わせ(A1,E6など)で表されます.一つのファイルには複数のシートを作ることができ,それぞれシート見出しで切り替えられます.シートの作成は,
メニューから「挿入」→「ワークシート」を選択する,
または,
シート見出しを右クリックし,ポップアップメニューから「挿入」を選択する.「挿入」ウインドウから「ワークシート」を選択し,「OK」をクリックする.
ことで行えます.シートの見出しは,名前の入力・変更ができます.
ファイルの保存は,メニューの「ファイル」→「上書き保存」などの保存メニューで行えます.使用したソフト固有のフォーマットで保存すると,他のソフトで読めない場合があります.例えば,Excel形式で保存したファイルは,OpenOfficeで開くことができますが,その逆はできません.表計算ソフトの場合は,CSV形式のようなカンマ区切り,あるいは,tab,スペースなどの特定の記号で区切ったテキストデータでも保存しておくと,他の表計算ソフトで開け,また,テキストが開けるソフトでも表示可能となるため,互換性が高くなり便利です.CSV形式での保存する場合は,メニューから「ファイル」→「名前を付けて保存」を選択し,ファイルの種類」でCSVを選択し,ファイル名を入力して「保存」をクリックします.ただし,テキストデータですので,作成したグラフなどは保存されません.必要に応じてファイルの保存形式を選択してください.
データ入力をするセルの選択は,マウスクリックによって行います.選択されたセルを,カーソルまたはアクティブセルといいます(図1.1ではB5).セルへのデータ入力は,アクティブセルもしくは数式バーで行います.アクティブセルの行列番号は,名前ボックスに表示されます.
名前ボックスに直接行列番号を入力すると,そのセルがアクティブになります.
セルには,数値,文字列,数式のほか,IF・THENなどのルールも記述できます.
数字・文字列の入力: そのまま入力します.
日付の入力: 年月日を【 / 】で区切って入力します.
数式の入力: イコール【 = 】を入力してから,数式を入力します.
演習1.2
Sheet2に次の項目を入力しなさい.なお,[]内は,自分のデータを入力する.
A | B | C | D | E | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 学籍番号 | 氏名 | 誕生年(西暦) | 誕生月日 | 年齢 |
2 | [学籍番号] | [氏名] | [誕生年] | [誕生月日] | = 2011 - C2 |
セルの書式(表示形式,配置,フォントなど)の設定変更は,対応するメニューやツールから選択する他,セルを選択 ⇒ 右クリック ⇒ ポップアップメニューの「セルの書式設定」からも行えます.
シート上の複数のセルを選択できます.セル範囲の指定には,
(1) マウスでアクティブセルをドラッグする,
(2) Shiftキーを押しながら目的範囲の最後のセルをクリックする,
(3) 名前ボックスに範囲を指定する(A1:C5など),
などの方法があります.すでに選択されたセル範囲を拡大縮小するときは,さらにShiftを押しながらセルをクリックするか,Shiftを押しながら矢印キーを使って範囲を指定します.
不連続なセル範囲の指定は,Ctrlキーを押しながら行います.
行番号,列番号をクリックすると,行全体,列全体を選択できます.
Ctrl + 矢印キーで,選択された範囲の矢印方向の先頭もしくは末尾のセルに移動できます.
セルに入力されたデータを,他の位置や別のシート,別のブックに移動/コピーする場合は,セルを指定して「切り取り」/「コピー」を行い,移動させたいセルを指定して「貼り付け」を行います.また,同じシート内であれば,指定された選択範囲の太枠をマウスでクリックし,ドラッグして移動させることもできます.
アクティブセルのハンドル部分をクリックしてドラッグすることで,データのコピーや連続データの作成ができます.
アクティブセルのハンドルをドラッグすると,セルの内容が選択されたセル範囲にそのままコピーされます.例えば,セルA1に数値「1」が格納されているときに,セルA1を選択してハンドルをドラッグすると,指定された範囲に全て「1」が入力されます.Ctrlキーを押しながらハンドルをドラッグした場合は,指定された範囲に,1,2,3・・・というように1ずつ増加する連続データが入力されます.ただし,これらの操作は,ソフトウエアやバージョンにより逆の場合があります.
また,例えば,0,5,10のように連続データの最初の数個を入力し,それらを選択してハンドルをドラッグすると,入力されたデータの刻みに倣った連続データが作成されます.
連続コピーや連続データの作成は,メニューからも行えます.セル範囲を指定して,メニューから「編集」→「フィル」を選択し,操作を選びます.「下方向へコピー」などを選ぶと,範囲内の指定方向へ連続コピーされます.「連続データの作成」を選択すると,初期値から増加する連続データを入力できます.演習1.1では,B列に初期値0で1ずつ増加する連続データをB101まで入力しています.また,C列,D列では,各列の1行目に入力した式を101行目まで連続コピーしています.
演習1.3
Sheet3の
(1) セルA1に数値【10】を入力し,A10まで連続コピーしなさい.
(2) セルB1に数値【100】を入力し,B2007まで連続コピーしなさい.
(3) セルC1に数値【1】を入力し,初期値1から1ずつ増加する連続データを10まで入力しなさい.
(4) セルD1に数値【0】を入力し,初期値0から5ずつ増加する連続データを50まで入力しなさい.
(5) E列に,初期値2から2ずつ増加する連続データを2000行まで入力しなさい.
相対参照
基準のセルから見た相対的なセル位置が参照されます.例えば,B1のセルに数式【 = A1+1 】を入力し,B1をB2にコピーした場合は【 = A2+1 】のように,A1ではなくA2が参照されます.演習1.1では,C列の計算にB列を,D列の計算にC列を相対参照しています.
絶対参照
$を使うと,他のセルから見た絶対的なセル位置が指定されます.例えば,【 = $A$1 】とした場合,どのセルにコピーされてもセルA1のみが参照されます.演習1.1では,C列の計算でセルA1を絶対参照しています.
複合参照
$A1,A$1のように,行・列,もしくは,番号の一方のみを絶対参照し,他方を相対参照することもできます.
演習1.4
(1) Practiceという名前の4番目のシートを作りなさい.
(2) Sheet3のA~E列をシートPracticeのA~E列にコピーしなさい.
(3) F列の1行目に,「絶対参照したA1の値」と,「E列の同じ行を相対参照した値」とを掛ける式を入力し,100行目までコピーしなさい.
メニューの「挿入」,もしくは,シート上で右クリックしポップアップメニューの「挿入」を選択することで,新しいセル,行,列の追加メニューを利用できます.特定のセル範囲を指定して追加することもできます.
メニューの「編集」→「削除」,もしくは,シート上で右クリックしポップアップメニューの「削除」を選択することで,セル,行,列の削除メニューを利用できます.特定のセル範囲を指定して削除することもできます.
複数のセルの内容を削除するには,セル(範囲)を選択してDeleteボタンを押します.
セルの内容のコピー,移動は,セル(範囲)を選択して,メニューの「編集」から選ぶか,または,Ctrl-c,Ctrl-xと,Ctrl-vで行います.
セルの内容のコピー,移動は,セル(範囲)を選択して,メニューの「編集」から選ぶか,または,Ctrl-c(コピー),Ctrl-x(切り取り)と,Ctrl-v(貼り付け)で行います.
セルの内容を変更,移動するときは,参照に注意しましょう.参照先の内容が変わり,計算に不具合が生じる可能性があります.コピーの場合,相対参照がコピー先にも反映されます(A1->B1の参照をA2にコピーすると,A2->B2の参照になります).移動の場合は,参照位置が変わりません(A1->B1の参照をA2に移動すると,A2->B1の参照になります).
表計算ソフトには,予め使用頻度の高い関数が用意されており,それらを利用することができます.演習1.1のPI()やsin()も関数です.関数の入力は,セルに直接入力することも,メニューの「編集」→「関数」から選択することもできます.関数は,[=“関数名”()]の形で使用し,()内に数値,セル番号,セル範囲などを入力します.
演習1.5
(1) シートPracticeのセルA15に【 =SUM(A1:A10) 】を入力し,結果を確認しなさい.
(2) シートPracticeのセルC15に【 =AVERAGE(C1:C10) 】を入力し,結果を確認しなさい.
(3) シートPracticeのセルD15にメニューから表示されるいろいろな関数を入力して試し,関数の使い方を覚えなさい.
表計算ソフトには,簡易な操作でグラフを作成できる機能があり,さまざまな種類のグラフを作成できます.グラフを作成することにより,視覚的に式の変化を見ることができます.
グラフの作成は,グラフ表示させるセル範囲を指定して,メニューから「挿入」→「グラフ」を選択します.グラフのオートフォーマットが表示され,グラフの形式などを選択することができます.
グラフが表示された後,再びシート上で別のセル範囲を指定してグラフエリアにドラッグすると,ドラッグされたデータのグラフが表示されます.Excelでは,元のグラフに追加される形で表示されますが,OpenOfficeでは,ドラッグされたデータのみ表示されるため,グラフを追加したい場合は元のデータも含めてセル範囲を指定するようにします.
演習1.6
(1) 新たなシートGraphを作成し,1行目に次の文字を入力しなさい.
A | B | C | D | E | |
---|---|---|---|---|---|
1 | step | x[rad] | sin(x) | cos(x) | sin(x)*cos(x) |
(2) A列2行目から0~200まで1ずつ増加する連続データを入力しなさい.
(3) B列2行目に【 = PI() * A2 / 100 】を入力し,セルB202までコピーしなさい.
(4) C列にsin(x) (x = 0~2π)のデータを作成し,そのデータを折れ線グラフで表示しなさい.
(5) D列にcos(x) (x = 0~2π)のデータを作成し,その折れ線グラフを追加しなさい.
(6) E列にsin(x) * cos(x) (x = 0~2π)のデータを作成し,その折れ線グラフを追加しなさい.
演習1.7
(1) シートGraphの1行目G列から,次の文字を入力しなさい.
G | H | I | |
---|---|---|---|
1 | x | e^x | ln(x) |
(2) G列2行目より,初期値0.01,刻み0.05の50個の連続データ(52行目まで)を作成しなさい.
(3) G列のデータを参照して,それぞれH,I列を入力しなさい.
(4) H列,I列のデータを折れ線グラフで表示しなさい.