2011年5月9日7時3分
被災地のがれき撤去が進むなか、岩手、宮城、福島3県で推計2500万トンという膨大な量を一時保管する場所の不足が深刻化している。山が海に迫る三陸海岸ではそもそも用地確保が難しく、「このままでは一時中断」との悲鳴も。岩手県は9日、特命チームを立ち上げて、がれきの実態把握や処理計画策定を急ぐ。
同県釜石市の市街地から車で約10分。ダンプカーが次々と市有地にがれきを運び込む。奥行き100メートルほどの細長い土地に高さ10メートル以上のがれきが積み上がる。誘導の作業員は「あと少しで満杯。置き場所がなくなったら困る」。
同市のがれきは推計82万トン。保管場所として市街地に近い採石場などを確保した。分別後、焼却や埋め立て、リサイクルに回す。
同市は面積の9割が山間部で平地は1割。さらに、広い土地は仮設住宅建設が優先される。一方、市外は遠いため時間と運搬費がかさむ。市幹部は「確保済みの10倍以上の広さの土地が必要になるのではないか。このままでは撤去がストップしかねない」と嘆く。
中心部が津波にのまれた同県陸前高田市は、駐車場など公有地約25万平方メートルをがれき保管場所にした。多い日には撤去現場と保管場所を20往復するというトラック運転手は「とてもじゃないが、足りない」。
市は4月25日発行の市広報で、住民に私有地の提供を呼びかけた。
岩手、宮城、福島3県のがれきは、車や船舶を除いて推計2500万トンで、阪神大震災の1.7倍。うち岩手分は583万トンで、県は必要な保管場所を3平方キロと見積もるものの、これまでに確保したのは1.3平方キロにとどまる。
山間部などの国有地を使う案もあるが、被災地から数十キロ離れた場所も目立ち、距離が課題。県担当者は「県有地などの活用も含め、対策を関係機関と早急に検討する」といい、職員10人をがれき処理問題に専従させる。
宮城県も、リアス式海岸が続く県北部で用地確保が難しい。比較的平地が多い県央・県南部を中心に約100カ所(計4.5平方キロ)を確保したが、県の担当者は「足りなくなる可能性もある」と話す。
環境省廃棄物対策課は「ある程度遠い土地の活用も検討する必要があるのではないか」とみている。(森本未紀、池田敦彦)