二十一世紀に入り、電力を取り巻く環境が大きく変化しようとしている。原子力発電では、プルサーマル計画という核燃料の再利用システムが当初目標より大幅にずれ込み、スタートのめどすら立っていない。国策とされる再利用システムが立ち往生している背景には、現在の態勢に対する不信感とともにエネルギー政策に、より積極的にかかわろうとする立地県の意識の高まりがある。国民生活の基盤となるエネルギー政策の揺れを立地県から問い直す。

 

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電源三法交付金−「箱物」はできたが・・・

維持管理へ活用求める声

(5月29日(水)掲載)

 楢葉町役場に隣接する三階建ての「町コミュニティセンター」は、収容人員八百人の大ホールを有する双葉郡内最大の文化施設だ。
 電源立地地域の公共施設を主に整備する国の電源三法交付金を使って建設し、昭和六十年にオープンした。年間を通じて、コンサートやミュージカル公演などが行われ、町民に文化の薫りを届けている。
 町は昭和三十一年、木戸、竜田の二つの村が合併した。コミュニティセンター建設に携わった当時の町職員は「合併後、約三十年が過ぎても二つの地域の間にしこりが残っていた。町民融和の象徴として文化施設の新設が持ち上がった」と振り返る。
 だが、開館から十数年が経過した今、維持管理には年間七千万円がかかる。コンサートなどの主催者が支払う使用料だけではまかない切れない。
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 原子力、火力発電所が立地する浜通り地方の市町村が受ける電源三法交付金は、発電所の立地を早めに進めることを大きな狙いとしているため、発電所着工から短期間で自治体に支払われる。
 三法交付金のうち、楢葉町がコミュニティセンター建設に活用した「電源立地促進対策交付金」は発電所の着工から運転開始の五年目まで、道路建設、教育文化施設などの整備に充てることができる。町はコミュニティセンター以外にも、陸上競技場や野球場などを配置した町総合グラウンド、天神岬スポーツ公園などの施設を立地交付金でつくった。
 いずれのスポーツ関連施設も今、年間二千万円以上の維持管理費を必要としている。
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 交付金と並んで楢葉町の収入の柱である原発関係の固定資産税は、平成二年度の約三十億円をピークに減少に転じ、今年度は十億円に下がった。県税である核燃料税を財源にした町への交付金も最も多かった平成二年度の約一億七千万円の三分の一にまで減った。
 遠藤一教町企画課長は「町の今年度の当初予算は総額五十三億円。交付金でつくった施設の維持管理に一億円以上が投入される現状は厳しい」と打ち明けた。
 電源三法交付金の使い道は公共施設の建設などに限定されてきた。ここ数年、国は立地地域の要望に配慮し、使い道の幅を若干、広げた。遠藤課長は「電源地域に長期的に配分される交付金を、施設の維持管理費に振り向けられる制度になれば、楽になるのだが…」と訴える。



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