わずか数時間で「通報基準」の7倍!100倍を超えた作業員も!
「封印された内部被曝」福島第一原発衝撃の実態

2011年05月13日(金) FRIDAY
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「これだけのデータでは何とも言えないが、仮に測定効率が1%でバックグラウンド(自然放射線)が差し引かれているとすると、8万cpmは極めて多量。相当量の被曝をしていると思います。WBCは人体を通過するガンマ線しか測定できない。アルファ線やベータ線を発する放射性物質が体内にあっても、カウントできないので、核種(原子核の種類)によって違いますが、測定値の3倍から5倍は被曝していると考えるべきです。1秒間に1300ベクレル被曝する計算となり、嘔吐などの急性症状が出てくる人もいるでしょう。

解除(原発で作業するための登録解除)用の申請書。4名とも体内の放射線量が作業前の7〜19倍に

 すぐ医者に診てもらって、措置すべきです。後年、影響が出て来る可能性がある。おそらく、呼吸の際に放射性物質を吸い込んでしまったのでしょう。ガス防護マスクを装着させないで、危険区域で作業をさせたのではないか。労働者の安全を軽視する東電の責任は非常に重い。雇い主は将来にわたって健康管理をしなければなりません」

 元放射線医学総合研究所主任研究官で医学博士の崎山比早子(ひさこ)氏が続ける。

「内部被曝をした場合、有効な対処法はないのが実情です。早い時期にカリウムを摂取すると、セシウムの排出が増えたという動物実験の結果はありますが、人間では効果がみられなかったと報告されています。尿や便の検査を4日間ほどすれば、ヨウ素やセシウムなどの割合はある程度、推定できます。これだけ高い値が出た場合は、当然、尿検査や便の検査などをするべきです」

 注目すべきは、前述したように震災によって福島第一原発のWBCが壊れた影響で、内部被曝した3名とも柏崎や東海村でWBC検査を受けていることだ。すなわちそれは、現在も最前線にいる作業員たちの内部被曝値を、誰も把握していないことを意味する。東京電力総務部広報センターはこう回答した。

「数万cpmという数字が出たことは事実です。今後、健康診断や治療を実施する予定です。これまで、男性は3ヵ月に一度、女性は1ヵ月に一度、WBCによる検査を行っておりましたが、(原発の事故により)作業員の数が急増し、整理できていないというのが正直なところです。また、福島第一原発には4台のWBCがございますが、壊れているのではなく、放射線が高いところに設置されている関係上、正確な数値が計測できなくなっています。今後は外部被曝を含め、管理に努めます」

作業を終え、休む作業員たち。食事はレトルトが中心でフロにも入れない。防護服のまま寝る過酷な環境だ[PHOTO]愛媛大学・谷川武教授提供

 落合さんが憤る。

「原発の20km圏内で行方不明者の捜索が始まったのは震災の1ヵ月後でした。警察も自衛隊も寄り付かなかったのは、東電から放射能汚染が酷いと聞いていたからではないのか。内部被曝の調査も発表もしないのは、補償の範囲が広がるのを怖れているから、としか思えない。すぐに、現場作業員と原発周辺に住み続けている人々をWBC測定にかけるべきです。4月22日から20km圏内は立ち入り禁止となりましたが、20〜30kmの計画的避難区域には、どんどん人が戻ってきている。

 水は出る、電気も来ている、家もある。店もどんどん、再オープンし始めています。放射能は目に見えないから、一見、復興しているように見えるんです。だからこそ、目に見える数字で危険性を知らせなければならないと思います。これ以上、人災を拡大させないでください」

 もはや、一刻の猶予も許されない。

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