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原発事故現場で奮闘する方を守るために、派遣前に自家造血幹細胞採取を!

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3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島原発事故の動向は、福島県にとどまらず国民的関心を集めている。既にレベル5の原子力事故と報道されているが、果たしてレベル5で留まるかどうかが問題である。
原子力・放射線関連の仕事に従事する人には急性毒性のために、被曝許容量が法律で定められている。今回の事故処理での事実をふまえて上限が引き上げられたと報道されている。事故の拡大を防ぐ作業のために、法律違反となる被曝量に従事する指示を出せないのは分かるが、そのために重大な事故を引き起こしては、何のための法律か分からない。角を矯めて牛を殺すとは、このことであろう。

被曝許容量が定められているのは、骨髄毒性のためである。骨髄は白血球・赤血球・血小板といった血液中の細胞を作る場所である。しかしながらこの骨髄毒性は、ある医療技術で克服できることが分かっている。造血幹細胞移植と呼ばれる技術だ。骨髄移植と言った方が通りはよいかもしれないが、今は末梢血幹細胞、臍帯血など様々な細胞で同じことが可能になっている。白血病などの血液疾患の治療に使われているが、放射線被曝事故の犠牲者が骨髄移植で救われた話は日本でも多数存在する。1999年に発生した東海村JCO臨界事故では、実際に2名の方に造血細胞移植が行われた。2名とも他人の造血幹細胞が移植され白血球などは回復したが、他人のものであることが原因かは定かではないが最終的に救命することはできなかった。想定されない事故ならば、他人の造血幹細胞移植を使うことも致し方ないだろう。それしか方法がないからだ。しかしながら、他人の細胞を使用した造血幹細胞移植では、もともと20%ほどの移植関連死が避けられない。個人の遺伝子の違いに起因する移植片対宿主病と呼ばれる合併症が発生するほか、移植後の免疫能の回復にも影響を与えるからだ。

こういったことを避ける医療技術も実は存在する。自己の造血幹細胞を使えばよいのだ。自家造血幹細胞移植と呼ばれるこの技術も、白血病・リンパ腫といった血液難病の治療には日常的に行われている。自分の細胞を使うので、移植片対宿主病や免疫抑制剤のことを心配する必要はない。放射線被曝事故の場合は更に好都合である。他人の細胞を使う場合はそれが生着するように、被曝を受けた人に更に抗がん剤を使用しなければならないが(これを移植前処置と呼ぶ)、自家移植では前処置は不要である。

原発事故の現場対策には、電力会社、自衛隊、消防署と多くの人が従事していると聞く。これらの人々が危険に曝されるのは、当然想定されることだ。想定される危険を軽減する医療技術が存在することが分かっているのに、現在までそれが使用されないのはどうしたことか。医療を管轄する厚労省と、事故処理を管轄する総務省の連携が悪いのか。医療技術として持っていても、日本では施策に移せないことは、拙文「臍帯血は宝の宝庫」でも触れたが、日本人は、決められたこと以外への応用の決断力がないのか。

東京消防庁の隊長の「部下を危険に曝して申し訳ない。隊員の家族にも。」と涙した記者会見は、世界でもほぼ同時に放送された。それを見た欧米の著名な血液学者の反応は、「なぜ日本では、危険を冒す人たちの幹細胞を採取・保存しないのか?」という意見で一致している。造血細胞移植を行う血液内科の現場では、採取・保存の準備を整えて待っている。自分たちが日常していることであるし、JCO事故の経験があるからだ。首相が「危険顧みぬ自衛隊員は誇り」と訓示したことが報道されているが、必要な対策を施すのが指揮官の務めである。勇を鼓するだけで目的を遂げられないことは、日本人は太平洋戦争で経験済みではないか。

作業時間が制限される現場で、制限を超える特別部隊が編成されるとの話も聞く。それが必要ならはすべきだし、臨界事故のリスクを考えれば志願する人もいるだろう。私自身でも志願したいくらいだ。ただ、自分自身が赴くのであれば、自分の末梢血幹細胞くらいは取って保存しておいてもらいたい。血液学者であれば、洋の東西を問わず誰もがそう思うであろう。

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執筆者プロフィール

鈴木律朗

鈴木律朗

名古屋大学大学院医学系研究科 造血細胞移植情報管理・生物統計学

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みんなのコメント

  • 2011年04月09日 09時17分
  • KAMU238
  • このコメントに返信

HNKの「念のため」発言を糾弾すべき!
福島原子力発電4号機の設計を担当した
田中三彦(日立バブコック・元原子力圧力容器設計者・サイエンスライター)の会見は必見です。
http://iwakamiyasumi.com/archives/7597

  • 2011年03月24日 11時29分
  • KAMU238
  • このコメントに返信

平井憲夫さんの心からの叫びを読み、原発の「安全」は机上の話だと思い知らされた。
地震も津波も起こる日本で、開発と修理と国民の啓蒙に莫大なお金をつぎ込み、、廃棄に300年以上管理を続け、その間もエネルギーをバンバン使い、これがクリーンなエネルギーなはずがない。
私は、貧乏生活でも楽しく暮らしていける。
3号機はプルサーマルだと、政府とマスコミはなぜいわないのか?騙しとおせるとでも思っているのか!

  • 2011年03月24日 01時00分
  • KAMU238
  • このコメントに返信

原発で働き、放射能を浴びた平井憲夫さんのブログを是非読んで下さい。この方は、1997年にお亡くなりになりました。
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html

  • 2011年03月24日 11時14分
  • eric_2010

で、これを読んだあなたの感想は?

  • 2011年03月23日 22時55分
  • NKBカップ
  • このコメントに返信

続き2。被災地域や被災者の方達の復興・支援は進むもんも
進まんようになってまう。この際、菅をすぐさま抹消させて
代表選をやってる場合やないから、小沢も復活させて代表
経験者で指揮命令系統を分担させる。当然ここは自・公とも
タッグを組んで、それこそオールジャパンで復興支援内閣と
言うか当分の間、臨時内閣を作り対処したらどうや。今よりも
ましになるんとちゃうか。とにかく何か手を打たんといかんやろ。

  • 2011年03月23日 22時40分
  • NKBカップ
  • このコメントに返信

続き1。下の愚考を愚行に訂正。

挙句に果てには、かじった程度の原子力の知識のくせしやがって
大風呂敷をひろげて、大した事はないすぐに収まると高をくくり
その後の惨状は周知の事実。

危機意識を持って初動を果敢にちゃんとやっといたら、その後の
汚染はかなり食い止める事が出来た筈や。パフォーマンスしか脳
がないこいつのおかげで汚染が拡大したと断じてええやろ。こんな
男がトップに立つぼんくら政権では

  • 2011年03月23日 22時24分
  • NKBカップ
  • このコメントに返信

野菜の出荷停止や摂取制限及び水道水の放射能汚染が広がりを
見せて来ている。ここまで汚染が蔓延したんは危機意識欠落の
間抜けの菅のせいや。

パフォーマンス狂のこいつは、肝心の初動においてあらゆる事を
想定して対策を練り、素早い指揮命令が求められる時に、官邸を
放っぽり出してのんびり原子力発電所に行くという愚考をやりく
さった。当然それにより発電所の現場の行動が制限され、処置が
遅れたんは明白や。

  • 2011年03月23日 17時31分
  • KAMU238
  • このコメントに返信

政府や医療関係者や放射能専門家、マスコミは、なぜ、放射能で短期間に汚染された場合のことについて触れないのだろうか?
1年間にゆっくり放射能を浴びる場合と、短期間に浴びる場合とでは違いがあるのか?
基準内の放射能だったら、短期間に浴びても大丈夫なのか?
私は、短期間に浴びたら放射能の基準値内であっても変わってくると思う。
そういう心配になぜ「今すぐには……」という言葉でごまかすのか?



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