奨学金:施設出身女子大生借りられず 虐待の母同意望めず

2011年5月12日 19時23分 更新:5月12日 23時15分

 今春、児童養護施設から東京都内の私立女子大に進学した女性(18)が、日本学生支援機構の奨学金を借りられずに困っている。未成年の契約に、支援機構は親権者の同意を義務づけているが、虐待していた母から同意を得るのは難しいためだ。法曹関係者らは「施設で育った人が支援を得られないのは不当で、貸与を認めるべきだ」と訴えている。

 女性は幼稚園の年中から施設で暮らした。進学校に進んだ時も「母親から『おめでとう』の一言もなかった」という。高校2年からスーパーのレジでアルバイトをし、金をためた。

 いま施設を出て家賃4万円の都内のアパートで暮らす。学費は慈善団体の支援でまかない、毎月5万円の奨学金とバイト代を生活費にあてようとしていた。しかし4月中旬、奨学金を申請できないと言われ、収入のめどがたたなくなった。友人の誘いはすべて断り、TOEICの問題集もあきらめた。

 大学では英文を専攻し、将来は国際支援に携わる夢もある。「国民健康保険もNHKの受信料も自分で払っている。返せる分しか借りないつもりなのに……」と肩を落とす。

 女性が暮らした施設の施設長(50)は「小1年の時から母親に会っておらず、同意は望めない。施設で育ったことで不利益を被らないよう、救済策を考えてほしい」と訴える。

 これに対し支援機構広報課は「民法は、未成年の法律行為に親権者の同意が必要としている。20歳になってから申し込むしかない」と、あくまで貸与できないとの立場だ。

 預金通帳や旅券の発行、一部の携帯電話の契約などは、親権者の同意がなくても、施設長の代行で可能だ。子どもの権利に詳しい平湯真人弁護士は「学ぶ権利は保証されなければならない。児童福祉法は教育などに関して施設長の親権代行を定めており、支援機構はこれを適用し、貸与を認めるべきだ」と話している。【榊真理子】

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