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【名古屋市長選】

黒船襲来<下> 壊すのか創るのか

2009年4月29日

松原武久前市長(左)と握手する河村たかし市長=28日、名古屋市役所で

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 「わしは庶民の代表。皆さんとおんなじで」。28日朝、新名古屋市長、河村たかしさん(60)はそう言って、市営バスに乗りこんだ。通勤客でぎゅうぎゅう詰めになっての初登庁である。

 行く先々を10台近いカメラが追い掛ける。「皆さんのおかげ」と神妙な面持ちで市長のいすに座り、でも「(座り心地は)大したことないな」と笑い飛ばした。

 この日のために特注した長さ10メートルの巨大な垂れ幕を2本、庁舎内に掲げた。「日本減税発祥の地ナゴヤ」「日本民主主義発祥の地ナゴヤ」と、公約を示す大きな文字が躍る。

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 「パフォーマンス」ともやゆされる言動の原点は、県議選や衆院選に落選し続けた経験にある。当時は無名の泡沫(ほうまつ)候補。なんとか注目を集めようと知恵を絞った。

 「銭湯作戦」では有権者との「裸の付き合い」をPRして報道陣を集め、友人に銭湯の客になってもらう演出までやった。「ガンジー作戦」では、徒歩で支援者の自宅を泊まり歩いた。これが後の自転車街宣に発展し、「庶民の代表」をより印象づけた。

 28日に河村さんとの引き継ぎをした前市長の松原武久さん(72)は、「世論を背景に進めるのは一つの政治手法だが、修復できない傷をつくることもある」とくぎを刺す。

 市民税10%減税についても「実現できたとしても、税収が減って行政サービスが低下しては意味がない」。

 米国では過去に多くの大統領が減税を公約に掲げて当選したが、財政赤字を増やす側面もあり、ポピュリズム(大衆迎合主義)との批判がつきまとう。

 国内各地で注目されたタレント出身の知事らには、後に市民生活を混乱させたと批判された人もいた。

 選挙中に名古屋入りした自民党の小池百合子元防衛相は、河村さんを「カットばかりで創造をしない人」と批判し、「カット、カットの後で名古屋はどうなる? 破壊者に名古屋をそっくり預けるのか」と問いかけた。

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 「ちょっぴり織田信長の気分」。初登庁を前にした河村さんは上機嫌だった。

 松原さんは前日の退任会見で、「三英傑の中では、260年の太平の世を築いた家康が一番えらいと思う」と語った。「信長なら、うまくいかなかったのではないか」。自らを信長に例える河村さんを意識した発言なのかもしれない。

 河村さんを市長に選んだのは51万もの票を投じた市民。この黒船が名古屋を壊すのか、創造するのか、注視していく責任が市民にはある。名古屋の場合、市民36万人の署名を集めれば、市長をリコールすることもできる。

 (連載は、社会部・豊田雄二郎が担当しました)

 

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