再開した東北新幹線の最高級座席「グランクラス」乗車! “1列目はおすすめできない”理由は?
nikkei TRENDYnet 5月12日(木)11時8分配信
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2011年4月29日、東京―新青森間を走る東北新幹線「はやぶさ」が再開。その初日に、グリーン車を越える新幹線史上最高級「グランクラス」に乗車してサービスを体験!“1両目はおすすめできない”理由とは? |
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東北新幹線といえば、地震発生6日前(3月5日)に最高時速300キロで走る「はやぶさ」が営業運転を開始。鳴り物入りで登場したグリーン車を越える新幹線史上最高級クラス「グランクラス」は連日発売と同時に売り切れるほどの人気だった。そんなはやぶさも震災前より本数こそ減ったものの、4月29日から東京―新青森間を1往復、東京―仙台間を1往復の合計4本の運転が再開された。
運転再開当日の新青森発「はやぶさ」号のグランクラスに乗車した!
筆者は幸運にも、運転再開初日の新青森発東京行き「はやぶさ506号」のグランクラスのチケットを入手できた。チケットは4月26日午前11時に発売され、携帯電話を使って「モバイルSuica特急券」で購入。販売開始直後はアクセス殺到でなかなか購入画面に進めなかったが、それでも11時6分ごろにグランクラスの座席を手配することができた。ちなみに東京発新青森行きの「はやぶさ501号」のほうが早く売り切れた。新青森発のほうが取りやすい傾向があるようだ。
モバイルSuica特急券を利用するには、携帯電話のアプリをダウンロードしたうえにクレジットカードの登録しなくてはならないが(ビューカードは無料、そのほかのカードでは年会費1050円が必要)、通常料金より1360円安い2万5000円(乗車券・特急券・グランクラス料金込み)で購入できた(ただ震災の影響で2010年5月10日時点では「はやぶさ」は臨時ダイヤで運転しているため、通常料金が「はやて」と同じ2万5860円と500円安くなっている)。
モバイルSuica特急券を利用する場合に注意が必要なのは、メールで特急券情報が届くのみでチケットはないこと。JR東海の「エクスプレスICサービス」のように乗車時に改札口で乗車票も発行されないので、記念としてチケットを保管したい人にはおすすめできない(ちなみにインターネットでの「えきねっと」予約であればチケットが発券される)。
行きは飛行機で秋田へ、激安レンタカーで青森駅に向かう
行きは東北新幹線再開前日だったため、空路で東北へ。羽田からANA便で秋田県にある大館能代空港(あきた北空港)へ飛んだ。青森県にある青森空港や三沢空港を使う手もあったが、大館能代空港は空港利用促進のため、搭乗者限定で最初の24時間に限り1000円でレンタカーを借りることができるのだ。
大館能代空港で借りて新青森駅で返却したが、借りてから返すまで22時間だったことから、1000円+7350円(乗り捨て料金)=8350円で利用できた。乗り捨て料金を入れてこの金額で借りられるのは大きい。その後、秋田県北部で十和田湖までほど近い大湯温泉に1泊し、次の日は朝から十和田湖を巡りながら弘前へ向かった。十和田湖で観光案内をしている人に伺ったところ、地震以降、観光客はほとんど見られないといい、ゴールデンウィークの集客に期待をしていた。
そして弘前に到着。弘前城のさくらまつりはたくさんの人で賑わっていた。例年よりも少ないとのことであったが、この旅行中一番多くの人を見た印象で、何だか安心した。筆者が訪れた4月29日はまだ桜(ソメイヨシノが主)は2〜3分咲きであったが、それでも初めて訪れた弘前の桜はすばらしかった。5月2日ごろに満開となり、周辺では交通渋滞が起こるほどの人が訪れたとのこと。この流れをゴールデンウィーク明けも継続して欲しいところだ。
その後、弘前から青森に向かう途中の黒石市で、B級グルメの「つゆやきそば」(焼きそばにつゆをかけたもの)も食べたが、東北地方といえば青森には八戸のせんべい汁、十和田のバラ焼き、秋田には横手のやきそばなどたくさんのB級グルメがあるので、それらを巡る旅もおすすめだ。現在青森県では、観光キャンペーン「青森ディスネーションキャンペーン」が7月22日まで実施されており、さまざまなイベントが企画されているので、この機会に是非訪れてみてはいかがだろうか。
いよいよ「はやぶさ」に乗車
さらにレンタカーで青森へ移動し、2011年1月にオープンしたばかりの1年を通じてねぶた祭りに触れられる青森駅前の新スポット「ねぶたの家 ワ・ラッセ」で実物のねぶたを見学したあと、いよいよ隣の新青森駅から「はやぶさ」に乗る瞬間が来た。
ホームに入線するのは発車の約10分前で、その少し前から多くの人がホームに集まっていた。はやぶさが入線し、いよいよグランクラスに乗り込む。
全18席の乗客のほとんどがグランクラスを目当てに乗車してきた様子で、すぐに撮影大会(?)が始まり、デジカメやビデオで撮影する人がほとんどだった。そして定刻の16時17分に新青森駅を出発。盛岡―大宮間ではスピードを落として運転しているため、通常よりも57分長い、東京までの4時間7分の旅がスタートした。
出発するとすぐにアテンダントから挨拶があり、引き続き温かい布製おしぼりのサービスがあった。そして席に置いてあるメニューから好きな飲み物が注文できる。アルコール類も含めて乗車中は飲み放題だ(もちろん持ち帰りは不可)。
ドリンクメニューは、アルコール類がビール、赤ワイン、白ワイン、日本酒、シードル、ソフトドリンクがホットはコーヒー、緑茶、紅茶、ハーブティー、冷たいものはコーヒー、緑茶、黒烏龍茶、アップルジュース、ダイエットコーラ、ミネラルウォーターから選べる。飛行機と違って気圧の変化もないので飲み過ぎには注意が必要であるが、いつでも飲めるのは大きな魅力だ。
弁当は乗車時間中の好きな時間にオーダーでき、和軽食と洋軽食から選べる。和軽食の東京発は「青森編」、新青森発は「東京編」として、到着地にちなんだ料理を弁当に盛り込んでいる。弁当はその名の通り「軽食」であり、量的にもあまり多くはない。デパートで購入できるミニ弁当といったところだろうか。最近では東京駅をはじめ新幹線の駅では本格的な弁当が充実していることを考えれば、「グランクラス」の名に相応しいのかと少し疑問に思う。
そして茶菓子としてリンゴパイなどが配られた。軽食と茶菓子については、ドリンクの飲み放題とは異なり、1乗車につき1回のみの提供。また車内販売メニューはアテンダントを通じていつでも注文できるので(もちろん有料)、車内販売のワゴンサービスはグランクラスの車両には入って来ない。食事以外のおつまみも好きなときに注文できるわけだ。
そのほか、スリッパは座席前ポケットにあり(持ち帰り可能)、新聞はグランクラスのデッキと室内の間にあるスペースに置いてあって自由に読める。毛布の貸し出しにも対応。さらに各座席に電源用コンセントはあるものの、残念ながら東海道新幹線N700系のぞみのようなインターネット接続サービスはない。
新青森を出発から2時間が過ぎ、仙台を出発したあとに筆者も毛布を借りて30分くらい眠ってしまった。座席が45度倒れ、特に横幅がゆったりしているグランクラス自慢のシートは寝心地が良く、改めて質の高さを実感。そうしている間に大宮に到着。最後にコーヒーを注文し、到着に備える。この日は遅れることもなく、定刻20時24分に東京駅に到着。あっという間の4時間であった。
飛行機の上級クラスを意識した雰囲気でも「1列目はおすすめできない」
実際に乗車してみると、グランクラスはこれまでのグリーン車とは大きく違い、車内の雰囲気は飛行機に近いと感じた。特に国内線上級クラス(ANA「プレミアムクラス」、JAL「国内線ファーストクラス」)とサービス体系も似ており、かなり意識しているのだろう。
飛行機と違うのは、シートベルトがないのはもちろん(座り心地が飛行機の上級クラスのようなので錯覚を起こしそうだった)、途中に停車駅があるので乗客が入れ替わることだろう。筆者が乗車したときも仙台駅で乗客の3分の1くらいが入れ替わった。アテンダントは仙台に到着する直前、乗客が出口に向かって進んだ直後に急いで座席のセッティング(スリッパやドリンクメニューなど)を行い、仙台から乗車する新しい乗客を迎えていたのは鉄道ならではだった。
また、海外の鉄道(ユーロスターなど)では上級シート利用者向けにドリンクや軽食が食べられる専用ラウンジを駅の中に設けているケースがあるが、グリーン車を上回るサービスを提唱しているのであれば、ぜひとも東京・大宮・仙台・盛岡・新青森の各駅に空港にあるような専用ラウンジを導入して欲しい(ユーロスターの1等車「ビジネスプレミア」ではロンドンやパリの駅で利用できる)。
グランクラスは10両編成の10号車に位置しており、全6列で1人掛け席と2人掛け席がある(合計18席で1人掛けが「A」、2人掛けが通路側から「B」「C」となる)。
筆者の座席は「1B」。東京寄りの向きでは最前列になるが、できれば東京発・新青森発ともに1列目は避けたほうがよいと思う。理由は食べ物やドリンクのサービスがあり、通常のグリーン車に比べてアテンダントの出入りが多く、正直落ち着かない。両方向ともに3列目以降の席が快適でおすすめといえる。また「B」席に座ると、「C」席との間に簡単な仕切りがあって景色をあまり楽しめないことから、1人で利用する場合には「B」席は避けたいところだ。
また食事やドリンクのサービスは不要で静かな時間を過ごしたいのであれば、しばらくの間はグリーン車のほうが静かでいいのかもしれない。しかし、国内の鉄道で最高級のサービスとシートを提供するグランクラスの進化にも期待しつつ、まずは上質な時間を体験してみてはいかがだろうか。
(文・写真/航空・旅行アナリスト 城西国際大学観光学部助手 鳥海 高太朗)
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最終更新:5月12日(木)11時8分
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