福岡県粕屋町で2月、飲酒運転の車にはねられて高校1年の山本寛大(かんた)さん=当時(16)=と皆越(みなこし)隼人さん=同=が亡くなった事故を受け、「飲酒運転撲滅を推進する市民の会」(会長・河部浩幸福岡商工会議所会頭)は啓発CMの製作を進めている。生前の山本さんや母校の後輩たちが登場し、飲酒運転が奪った命の重みを伝える。5月中旬から、福岡県内のテレビ局などで放映する予定。
メガホンを取るのは大分県臼杵市出身の映画監督塩屋俊さん(54)。飲酒運転による死亡事故を取り上げた映画「0(ゼロ)からの風」で知られ、CMの趣旨に賛同し、製作スタッフとともに無償で協力している。
「涙が出るものより、子どもが輝いている様子を」との遺族の要望で題材にしたのが、山本さんが中学校時代に部活で打ち込んだハンドボール。撮影は山本さんの母校、福岡市東区の多々良中央中学校で19日に行った。
映像では、現役部員の練習風景の後、生前の山本さんがコートで躍動する姿などが映し出され、同級生たちが事故後に広げたメールが読まれる。「大事な友達を大人の勝手なわがままで亡くしました。ほんとに悔しいです」「大好きな寛大の死を決して無駄にはさせません」と。
5月2日に完成見込み。山本さんの母美也子さん(42)は「映像を通じて、皆さんの心の中に寛大が生きてくれればうれしい」と話している。
市民の会は福岡市東区で2006年に起きた、飲酒運転による3児死亡事故を契機に、地元経済会が中心になって発足。今回の製作費110万円は、協賛企業を募って賄う。
=2011/04/28付 西日本新聞朝刊=