日本の奇跡は終わっていない

2011.03.18(Fri)  Financial Times

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日本の奇跡を生み出し、別の種類の奇跡を守り通してきた国民

 だが、こうした奇妙な感覚の中でも、東京には今も心強いほど見慣れた光景がある。タクシーの運転手は今もお辞儀する。車内は今も白いレースで飾られている。日本のトイレの便座は今も温められている(これは欠かせない小さな贅沢だ)。小売店の店主は今も顧客にサービスするために駆け寄ってくる。

M8.9、東北地方太平洋沖地震の死者26人に 沿岸には巨大津波

東京都心も大きく揺れ、何万人もの人がオフィスで一晩を過ごした(写真は都内のオフィスで地震で倒れた棚)〔AFPBB News

 友人たちが過去数日間のエピソードを語ってくれた。地震の当日は何万人もの人がオフィスに泊まり、何百万人の人が蟻の行列のように何キロも歩いて自宅に帰った。

 月曜になると、電車の運行が限られていたにもかかわらず、大勢の人が何とかして職場に戻ってこようとしたという。

 停電や次の大地震に備えて、トイレットペーパーや電池、豆腐がなくなった棚もあるが、人々が買う量を1人当たりパン1斤、牛乳1パックに自主制限しているところもある。日本を知る人、工場で働く従業員や細かな作業に取り組む職人を見たことのある人にとっては、どれも励みになる話だ。

 日本はその国民以外にほとんど天然資源を持たない国だ。日本の奇跡を生み出したのは彼ら日本人であり、また、世界がこの国の経済停滞にうんざりし、幻滅した時でさえ、別の種類の日本の奇跡を守り通してきた人々だ。

災い転じて福となす

 筆者がこうして原稿を書いている今も、ホテルは新たな余震で揺れている。今の状況は厳しく、恐ろしい。だが、筆者の頭をよぎるのは、もう定年退職している旧友の緒方四十郎氏が今週教えてくれたことだ。

 彼は「災い転じて福となす」という日本の諺を引用してくれた。英語では、散文的に「make the best of a bad bargain(不利な状況で最善を尽くす、逆境を乗り越える)」と言われる。日本語では、むしろ「災難を曲げて、それを幸福に変える」というような響きがある。緒方氏は、日本がまさにそれを成し遂げられることを願っている。

By David Pilling
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