[2008年1月30日 09:25更新]
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(08年1月号掲載)
「高すぎる国民健康保険料を、福岡市は引き下げて!」。こう訴えて署名活動を行っていた「国保をよくする福岡市の会」(安東毅代表委員) がこのほど、約14万6000人分の署名を議会に提出した。この署名数はオリンピック招致反対運動を上回り、市議会史上最多。
議会では継続審議となったが、同会では「少なくとも今後の値上げに歯止めをかけたい」と話す。政令市で最も高いとされる福岡市の国民健康保険料。人工島など大型公共事業偏重の「失政」のツケが、低所得者や高齢者を直撃している市の現状を、象徴する問題といえる。
「よくする会」が署名活動を始めたのは昨年夏。わずか3カ月という短い期間で、市の総人口の10%を超える署名が集まった。
宮本秀国市議はこう語る。「想像以上の賛同をいただき驚いている。街頭では通行人が向こうから寄って来て『ぜひ頑張って』と励まされた。これまでの活動の中で、こんなことは初めてでした」。高い保険料に多くの市民が悩まされているという事実を、如実に物語っている。
国民健康保険(国保)は主に地方公共団体が運営し、退職者や無職者、自営業者など、官庁や企業に勤めていない国民を対象に医療費の給付などをおこなう社会保険制度である。
福岡市の国保料は政令市の中で最も高いとされ、NHKやテレビ朝日などの全国ニュースで取り上げられたほどだ(グラフ1=上参照、数値は「よくする会」提供、以下同)。
このグラフは、モデルとして所得割算定基礎額200万円で被保険者(64)・扶養配偶者(55)・扶養者(40歳未満)の3人世帯を仮定し、数値を比較したもの。最も安い横浜市の2倍近いことがわかる。
国保加入者を年間所得額別に見てみると福岡市の場合、100万円以下の人は66%、200万円以下は実に83%。低所得者が多いことがわかる(グラフ2)。
所得に占める国保料があまりに高くなったため、払えない人が増加。06年度の保険料滞納世帯数は、約5万5700件(21.4%、政令市中5位)に上る。
高すぎる保険料が滞納者を増やし、その結果さらなる保険料値上げを呼ぶ―という悪循環を引き起こしているのが現状だ。「福岡市では現在、病気になっても病院に行けない、という例が急増しています。まさに『金の切れ目が命の切れ目』です」(宮本市議)。
値上がりし続けている福岡市の国保料。過去6年間の内訳をみると、医療分については据え置かれているが、介護分が増加していることがわかる(グラフ3)。
ではなぜこんなにも高いのか。市は「国保料が高いのは総医療費が大きいから」と説明してきたが、議会の答弁で「相関関係はない」と認めている。「一言でいえば、一般会計からの繰り入れ金が少ないからです」と宮本市議は指摘する。
福岡市ではここ数年、高齢者の無料パスが廃止されたり、学童保育が有料化されたりといった政策が続いてきた。宮本市議は「人工島など大型公共事業の失敗のおかげで、高齢者・障がい者福祉や教育関連の予算が削られ続けている」と憤る。国保料の問題も、その1例といえるだろう。
高すぎる国保料をどうするか。この問題をめぐる議論は、福岡市政のあり方に一石を投じるものとなりそうだ。
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