平成9年4月10日
動力炉・核燃料開発事業団
アスファルト固化処理施設事故関係作業状況報告
月間報告
(平成9年3月11日〜4月8日)
1.事故の概要および事故後の主な活動内容
1.1 火災の発生(3月11日10時06分頃)
再処理施設のアスファルト固化処理施設のセル内において10時06分頃
火災が発生。10時12分頃に水噴霧にて消火作業を行った。
1.2 爆発の発生(3月11日20時04分頃)
アスファルト固化処理施設において、20時04分頃爆発音の発生を確認。
その後、施設の窓、扉及びシャッターが破損し、煙が出ていることを確認。
また、第三低放射性廃液蒸発処理施設の扉及び窓が破損していることを確認。
1.3 一時管理区域の設定
3月12日2時30分にアスファルト固化処理施設周辺を一時管理区域
に設定。同日5時20分に一時管理区域の範囲を拡大。
1.4 事故対応の組織
(1) 3月11日に、本社に理事長を本部長とする災害対策本部を、東海事業
所に所長を本部長とする防護活動本部を設置。
(2) 4月4日に当面の措置が完了し、施設内の放射性物質を含め施設の管理
が可能になったことから、4月5日より災害対策本部を事故対策本部に、
防護活動本部を現地本部に切り替え。
1.5 事故後の主な活動内容
(1) 作業員合計112名について精密型全身カウンタ測定を実施。うち有意
な値が検出されたものは37名であった。摂取量は最大値でも法令に定め
る基準値以下であり、これによる預託線量当量はいずれも記録レベル
(2mSv)未満と評価。
(2) 3月12日よりアスファルト固化処理施設及び第三低放射性廃液蒸発処
理施設の破損した窓の閉口工事、シャッター等の閉口工事を行い、3月
19日に終了。また、3月18日よりシャッターの補強工事を行い、3月
20日に終了。
(3) 3月13日より一時管理区域の清掃及び建家壁面の除染作業を行い、3
月28日に建家周辺の一時管理区域を全面解除。
(4) アスファルト固化処理施設の安全確保に係わる作業として、放射温度計
によるカスク保管室(A121)側のアスファルト固化体(2本)の表面温度
測定を実施(3月12日〜3月27日)。
また、3月20日より定置式熱電対によるターンテーブル側のアスファ
ルト固化体(2本)の表面温度測定、定置式ガスモニタによる可燃性ガス
等の測定、テレビカメラによるアスファルト充てん室(R152)の監視を開
始し継続している。
これらの測定結果から3月25日に再爆発可能性はないと判断。
1.6 放射線管理
以下の放射線管理を実施
(1) 作業員の被ばく状況調査
(2) アスファルト固化処理施設建家内放射線管理
(3) アスファルト固化処理施設建家周辺放射線管理
(4) 事業所周辺の放射線モニタリング
1.7 報告書等の提出
(1) 法令報告(第1報)(3月21日)
(2) 原子力安全協定に基づく異常事態発生連絡書(3月21日)
(3) 原子力安全委員会環境放射線モニタリング中央評価専門部会(中評部会)
への環境モニタリングデータ報告(3月31日)
1.8 事故評価
(1) 「国際評価尺度(INES)」による暫定的評価レベルを3と公表(3月24日)
1.9 国や県への対応等
(1) 国等への対応
・「再処理施設アスファルト固化処理施設における火災爆発事故調査委員会」用
資料作成(第1回〜第4回)
・科技庁核燃料規制課現地調査(3月12日)
(2) 県等への対応
・茨城県原子力安全対策課現地調査(3月12日)
・原子力安全協定に基づく立入調査(3月16日)
・茨城労働基準監督局立入調査(3月18日)
・茨城県原子力審議会・茨城県東海地区環境放射線監視委員会・茨城県原子
力安全対策委員会合同報告会、原子力安全協定推進協議会(3月21日)
・茨城県防災会議(3月26日)
・茨城県環境放射線監視委員会(3月28日)
1.10 対外対応等
(1) 3月16日より、関係自治体、諸団体に説明を実施
(2) 3月21日に「皆様のお問い合わせ窓口」を東海事業所に設置し、窓口
業務を開始
1.11 特別調査班の設置
4月8日、火災発生時から爆発後の対処等の事実関係を再調査するために特別調査
班を編成し、調査を開始。
2.作業実績
2.1 アスファルト固化処理施設関係
(1)被害状況調査・整理(3月11日〜3月27日)
アスファルト固化処理施設、周辺施設、施設周辺の被害状況をビデオや写真
により撮影・記録するとともに、関連資料の整理を行った。
・アスファルト固化処理施設の建家損傷状況
窓の破損数 : 29箇所
扉の破損数 : 4箇所
シャッターの破損数: 3箇所
・第三低放射性廃液蒸発処理施設の建家破損状況
窓の破損数 : 4箇所
・建家内の損傷状況
エレベータは各階の扉が破損。1階、2階は各部屋の扉、機器及びダクトの
損傷が激しい。
(2)建家周辺の一時管理区域の作業状況(3月12日〜3月28日)
3月12日にアスファルト固化処理施設周辺の汚染状況を調査したところ、
一部にβγ線による表面密度4Bq/cm2を超える汚染が認められたため施設周
辺(約10000m2)を一時管理区域に設定するとともに放射線モニタリング
を開始した。
3月13日から一時管理区域の地面の清掃及び建家(アスファルト固化処理
施設、第二及び第三低放射性廃液蒸発処理施設、廃棄物処理場、並びに放出廃
液油分除去施設)の壁面等の除染作業を行い、3月16日(11時12分)に
2000m2、3月22日(15時05分)に5000m2の一時管理区域を解
除し、3月28日(16時20分)には建家周辺の一時管理区域の全てを解除
した。
(3)建家損傷部分の応急措置作業(3月12日〜3月20日)
・建家窓等の応急措置について
窓は施設内側からビニールシートによる目張りを行うとともに、外側から木
板による閉口工事を行った。
シャッターはビニールで目張りを行うとともに、 外側から木板等による補強
工事を、扉はビニールシート等による目張りを行った。
・建家内の応急処置について
エレベータについては、扉等が通路側にめくれていることから、注意表示等
を行った。
1階のトラックエアロック(G112)室は、上部からの物の落下の危険を避ける
ため、立ち入り禁止とした。
2階のカスク操作室(G221)に落下物防止用の安全ネットを設置した。
3階の分電盤室(G316)の扉部に注意表示を行った。
また、第二及び第三低放射性廃液蒸発処理施設内部のふきとり除染作業を3
月15日〜3月16日に行った。
(4)アスファルト固化処理施設の安全確保に係わる作業
・アスファルト充てん室(R152)の内部監視
アスファルト充てん室内部監視用のビデオカメラを3月19日に設置、
3月20日より監視を開始し、現在まで変化のないことを確認している。
アスファルト固化体の温度については、アスファルト充てん室内のカス
ク保管室側の2本のアスファルト固化体の温度を放射温度計により3月
12日から3月27日まで測定しドラム缶表面温度は18〜28℃の範囲であ
ることを確認した。これと併せて定置式熱電対を3月17日に設置し、3
月20日からターンテーブル側の2本のアスファルト固化体の温度測定を
開始した。
4月8日現在までにドラム缶表面温度は17〜21℃の範囲であることを確
認している。
可燃性ガス等の濃度については、定置式ガスモニタを3月19日に設置
し、3月20日より測定を開始した。4月8日現在までに可燃性ガス等は
検出限界値以下であることを確認している。
これらの監視・測定結果に基づき3月25日に再爆発の可能性はないと
判断した。
・仮設換気設備に係わる作業(フィルタ交換作業:3月12日〜3月14日)
(調査・設置工事 :3月16日〜4月3日)
(運転開始 :4月4日)
排気フィルタ室(A336)のフィルタ交換作業(合計61個)を実施した。
換気系の仮復旧のため、3月16日から3月26日までに排気系ダクト及
び排気ブロアの調査を行い、仮設換気設備の設置工事を3月26日から4月
3日まで実施した。
4月4日には、調整運転を行った後、試運転を実施し引き続いて安定的な
運転を継続している。仮設換気設備の運転に伴い、排気風量、排気フィルタ
の差圧、アスファルト充てん室内負圧、第1付属排気筒の排気モニタ、仮設
中間排気モニタなどの監視を継続しており、風量・差圧は目標値どおりに管
理され、放出放射能量は管理値以下であることを確認している。
・低放射性廃液の移送作業
低放射性廃液の第三低放射性廃液蒸発処理施設への移送準備として、3月
29日から仮設蒸気配管の据え付け、仮設蒸気配管を監視するためのテレビ
カメラの設置、蒸気温度計の作動確認、ろ過器の設置等を行い、4月8日に
移送作業を開始した。
(5)施設の安全管理と原因究明に係わる作業
現場の状況を調査し、施設の修復を効率良く行っていくため、現場作業計
画作成の専従班として4月1日に「アスファルト固化処理施設調査・対策班」
を設置した。現在、計画検討中。
2.2 放射線管理関係
(1)作業員の被ばく状況
火災発生時に、アスファルト固化処理施設及び第三低放射性廃液蒸発処理施
設から退避した作業員、爆発時にアスファルト固化処理施設周辺及び第三低放
射性廃液蒸発処理施設内にいた作業員合計112名に対し精密型全身カウンタ
測定を実施した。その結果、37名に微量の放射能が検出されたが、摂取量は
最大でも法令に定める基準値以下(Cs-134:年摂取限度の約9700分の1、
Cs-137:年摂取限度の約2100分の1)であり、これによる預託線量当量は
いずれも記録レベル(2mSv)未満と評価した。
これら37名に対しては産業医による面談を行った。
(2)アスファルト固化処理施設建家内放射線管理状況
建家内の放射線モニタリングを3月12日から継続して行い、空間線量率等
に大きな変動が無いことを確認している。また、3月20日から仮設エリアモ
ニタ、ダストモニタによるR151及びR152の放射線モニタリングを実施している。
(3)アスファルト固化処理施設建家周辺放射線管理状況
アスファルト固化処理施設周辺の放射線管理として以下のモニタリングを実
施した。
・一時管理区域内除染作業時の放射線モニタリング
・一時管理区域境界の放射線モニタリング
・アスファルト固化処理施設周辺の土壌の採取・測定
・同施設周辺の大気中浮遊じんの採取・測定
・同施設周辺の空間γ線量率の測定
・同施設周辺の雨水の採取・測定
第1付属排気筒の排気モニタの警報が20時09分に吹鳴。爆発により一時
的に放射能濃度が上昇したが、その後平衡状態に戻った。
モニタリングポスト1基に爆発発生時にわずかな空間γ線量率の上昇があっ
たが、これは降雨時による影響と比較しても小さなものであった。
空気浮遊じん試料の測定では、敷地内の一部からCs-134及びCs-137が検出さ
れた。また、土壌試料についてはアスファルト固化処理施設の極く近傍におい
て採取した土壌試料からCs-134及びPu-238が検出された。いずれも事故の影響
と考えられるが、平常の環境の変動幅に比べて特に高い値ではなかった。
(4) 事業所周辺のモニタリング作業
動燃東海事業所周辺の放射線管理として、以下のモニタリング作業を実施
した。
・モニタリングステーション、モニタリングポストにおける空間γ線量率監視
・土壌試料の採取・測定
・海水、海岸水及び海底土の採取・測定
・井戸水の採取・測定
・海上の大気中浮遊じんの採取・測定
・海上の空間γ線量率の測定
・事業所周辺の大気中浮遊じんの採取・測定
・河川水の採取・測定
・葉菜及び畑土の採取・測定
空気浮遊じん試料の測定では、約20km離れた大洗工学センターで定常モニタ
リングとして採取した試料から濃度は低いがCs-134及びCs-137が検出された。
これらは今回の事故の影響と思われるが、濃度も低く短期間のものであること
から、被ばく線量評価の観点からは影響は無かったものと考えられた。
その他、敷地外で採取した各種環境試料の測定結果は、全てこれまで得られ
ている過去の核実験に起因する環境の変動範囲内であった。
2.3 事故原因究明作業
平成9年3月16日に、本社に動燃事業団事故対策規定に基づく「原因究明
及び再発防止対策立案に専従する班」及び東海事業所に「調査・安全解析グル
ープ」を設置した。
学識経験者にご意見を聞くため、アドバイザー(4月4日現在7名)を依頼
した。
3.対応関係
(1)外部対応班の活動状況
東海村、ひたちなか市、日立市、那珂町等の関係自治体、茨城県警察、東海村消
防署等の防災機関及び漁協、農協、その他の諸団体等に事故対応状況の説明を実施
した。平成9年3月17日より4月8日までの説明回数は延べ約1000回である。
(2)「皆様のお問い合わせ窓口」の活動状況
今回のアスファルト固化処理施設事故に関する一般の方々からのご質問・ご意見
等に適切かつ迅速に対応するため、3月21日13時に東海事業所に「皆様のお問
い合わせ窓口」を開設した。4月8日までに95件の問い合わせがあった。
(3)来訪者等
・3/12 ・科技庁核燃料規制課・茨城県原子力安全対策課現地調査
・3/13 ・科技庁火災爆発事故調査委員会ご一行
・共産党衆議院議員他ご一行
・茨城県議会環境商工委員会ご一行
・警察、消防一時管理区域及びアスファルト固化処理施設内現場調査
・六ヶ所村環境保全課ご一行
・自民党政調会電源立地等推進に関する調査会会長他ご一行
・矢田部参議院議員
・茨城県議会環境商工委員会
・3/14 ・衆議院科学技術委員会他ご一行
・茨城県知事ご一行
・原子力安全委員長他ご一行
・3/15 ・内閣官房長官、科技庁長官、通産大臣、茨城県知事、東海村長ご一行
・公明党議員ご一行
・小林参議院議員ご一行
・塚原俊平衆議院議員ご一行
・3/16 ・青森県自民党県議ご一行
・原子力安全協定に基づく立入調査
・3/17 ・科技庁火災爆発事故調査委員会ご一行
・漁業関係者(県漁連、久慈町、久慈浜丸小、磯崎各漁協)ご一行
・連合茨城ご一行
・那珂町長、町議会ご一行
・3/18 ・茨城労働基準監督局立ち入り調査
・3/20 ・平野敏右東京大学教授、斉藤直消防研究所消火第2研究室室長
・3/21 ・参議院科学技術特別委員会ご一行、新日本婦人の会ご一行、建設一般・ダ
ンプ協会ご一行
・3/22 ・反原子力茨城共同行動ご一行
・3/24 ・民主党事故調査団ご一行、東海村議会議員ご一行、常陸太田市市長ご一行
・3/27 ・ひたちなか市議会ご一行
・3/29 ・科技庁原子力安全局長ご一行
・4/1,2 ・原子力安全委員ご一行
・4/3 ・反原子力茨城共同行動ご一行
・4/4 ・日本原燃(株)安全技術部長他
・4/5 ・科技庁原子力安全局次長他
・4/8 ・青森県議会議員ご一行
・ 科技庁火災爆発事故調査委員会ご一行
4.事故当日からの主な時系列
3月11日 10時06分頃 アスファルト固化処理施設セル内で火災発生
3月11日 20時04分頃 アスファルト固化処理施設で爆発音の発生
23時30分 第二及び第三低放射性廃液蒸発処理施設を立入制限区
域に指定
3月12日 2時30分 アスファルト固化処理施設周辺を一時管理区域に設定
5時20分 一時管理区域拡大(約10000m2を設定)
3月16日 11時12分 一時管理区域の一部解除(約2000m2)
3月19日 破損した窓、シャッター等の閉口工事終了
3月22日 15時05分 一時管理区域の一部解除(約5000m2)
3月28日 16時20分 一時管理区域全面解除
4月 3日 仮設換気設備の設置工事及び機器調整を終了
4月 4日 仮設換気設備の調整運転・試運転を行い、引き続き運
転を継続
4月 8日 低放射性廃液の第三低放射性廃液蒸発処理施設への移
送開始
特別調査班の設置
5.今後の予定
(1) 環境評価
引き続き事業所周辺、建家周辺の環境評価を実施する。
(2) アスファルト固化処理施設の安全確保
・仮設換気設備の設置及び運転
仮設換気設備の運転を継続する。
・建家内モニタリング
アスファルト充てん室(R152)のアスファルト固化体の温度及び可燃性
ガス濃度の測定、テレビカメラによる状況観察並びに建家内放射線モニタ
リングを継続する。
・低放射性廃液の移送
低放射性廃液を第三低放射性廃液蒸発処理施設へ移送する。(4月15
日終了予定)
(3)施設の安全管理及び原因究明のための作業
現場に残された記録紙等の回収作業を実施。
施設の安全管理及び原因究明のための現場調査の計画等について検討を
継続。
(4)特別調査班による調査
火災発生時から爆発後の対処等の事実関係を再調査するために特別調査
班による調査を実施。
6.その他
(1)再処理工場の一時運転
3月21日より一時運転を開始し、4月7日に終了した。
(2)アスファルト固化処理施設での火災報知設備の誤作動
4月5日11時24分頃に火災報知設備が発報したが、調査の結果、誤作
動と判明した。
以 上
アスファルト固化処理施設応急安全措置工程表 その1
アスファルト固化処理施設応急安全措置工程表 その2
アスファルト固化処理施設応急安全措置工程表 その3
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