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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】原発事故賠償 許されぬ政府の責任逃れ
少なくとも数兆円規模とみられる東京電力福島第1原子力発電所事故の損害賠償をめぐり、政府周辺でさまざまな構想が浮上している。
だが、原子力事故の損害賠償を定めた原子力損害賠償法に基づく十分な議論や説明もないままに東電に責任を押しつける形で賠償を急ぐ姿勢は菅直人政権の「責任逃れ」との批判を免れず、無責任といえる。
原賠法によると、事故が起きた場合、電力会社に加入を義務付けている保険に基づいて原発1カ所あたり最高1200億円が保険から支払われる。それを超える分については原則として電力会社が賠償すると定めている。
一方で、損害が保険による支払額を超える場合は必要に応じて国が援助を行うとし、「異常に巨大な天災地変または社会的動乱」による損害に対しては電力会社は免責され、国が責任を負うとも規定している。
問題は、大震災がこの免責適用対象にあたるかどうかについて、菅政権が明確な判断と説明を欠いていることだ。枝野幸男官房長官は「安易に免責などの措置がとられることは経緯と社会状況からありえないと、私の個人的見解として申し上げておく」(先月25日)と発言、政府の事実上の既定方針になった。海江田万里経済産業相も今月22日、「免責にはあたらない」との判断を示した。
原賠法に基づく免責に関する基本的判断や説明を国会や国民にせずに、東電に賠償責任を負わせる形で構想が進むことに、閣内にも異論がある。他の電力会社も巻き込んで全国的に実質的な電気料金値上げを行い、賠償金の原資にあてるなどの案も政府内にある。
だが、未曽有の犠牲者を出した大震災と津波、そしてその後の原発事故処理に対しても、政府はまったく責任がないと言い切れるのだろうか。
賠償問題は長期的に電力を安定供給するにはどうするかという問題とも密接にかかわっている。
首都圏の電力供給をあずかる東電の負担能力や役割をはじめ、国がどこまで責任を持つかなどについても検討すべきときだ。政府の責任を明確にしないうちに、安易に国民の負担を求めるのは到底受け入れられない。
菅政権は東電と国の責任を改めて明確に説明した上で、国民に理解を求めるべきだ。
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