(10日・両国国技館)
7場所連続優勝を狙う横綱白鵬(26)=宮城野=は豊真将を一気に寄り切り、3連勝とした。大関とりを懸ける関脇稀勢の里(24)=鳴戸=は、小結鶴竜に一方的に寄り切られ、1勝2敗となった。大関陣は魁皇が栃煌山を押し出し、日馬富士は小結豊ノ島を寄り倒してともに2勝目を挙げた。琴欧洲は北太樹にあっけなくはたき込まれて2敗目。把瑠都も豪栄道の逆転の上手投げに屈して初黒星を喫し、大関の勝ちっ放しはいなくなった。
優勝して恩返しに行きたい。豊真将を万全の寄りで下し3連勝した白鵬は、そんな思いを胸に土俵に上がり続けている。
15回目の優勝を飾った昨年名古屋場所。野球賭博問題により天皇賜杯がなく涙した。その千秋楽の夜。名古屋市内でトヨタ自動車の豊田章男社長から、「名古屋場所を盛り上げてくれてありがとう 感謝」と書かれた箱を手渡された。
その中にはトヨタの社員が手作りで用意してくれた優勝トロフィーがあった。白鵬にとってはかけがえのない優勝杯。その輝きは「賜杯」に勝るとも劣らないもの。
天皇賜杯は返さなくてはいけないが、これは永遠に白鵬のもの。「15回目の優勝の、唯一の証しですから。けっこう重くて片手で持てない。家に飾っています」とずっと大切にしている。
3月11日。東日本大震災により、宮城県にあるトヨタ自動車系列の工場が被災したと聞いた。今こそ恩返しするとき。白鵬は「まず行くことが大事かなと思っている」と話し、場所後に宮城野部屋として慰問する計画があることを明かした。
6月中旬の土日を利用し、豊田社長がトロフィーを手渡してくれたように、工場の社員を直接励ましにいくつもりだ。技量審査場所も賜杯はないが、優勝を手土産に慰問に行きたい。
この日は長女愛美羽ちゃんの誕生日。「4歳かぁ。早いね」。白鵬自身もこの4年間で「体つきは変わった。精神年齢もだいぶいったね。半世紀くらいじゃないの」と経験も積んだ。「(調子は上向きというより)初日から内容的にはいいと思います」と当初の弱気発言はどこかに吹き飛んでしまったかのよう。背負うものや期待が大きいほど、白鵬は輝きを増してくる。 (岸本隆)