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'11/5/11

「また事故起きる」 漁師仲間が憤りや危惧

 漁師親子の命が奪われた海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故で、過失責任が問われた3等海佐2人を無罪とした11日の横浜地裁判決。公判で漁船側の過失を主張し続けた被告らの態度に、吉清治夫きちせい・はるおさん=当時(58)=と長男哲大てつひろさん=同(23)=の遺族や漁師仲間は、憤りや事故再発への危惧を募らせてきた。

 ほぼ全ての公判を傍聴してきた治夫さんのおい、吉清祥章さん(21)。判決前に「(亡くなった)吉清さん親子がいないのをいいことに、言いたい放題だ」と不快感をあらわにしていた。

 漁協の事故対策本部長だった外記栄太郎げき・えいたろうさん(82)は、弁護側が提出した航跡図に強い疑問を抱き「漁師の常識として、わざわざイージス艦の前に行くような自殺行為はしない」と強調していた。

 横浜地方海難審判所は2009年1月の裁決で「事故の主因はあたご側」と認定。漁師仲間は「結論は出た」と、刑事裁判を静観してきた。治夫さんと20年来の友人だったという漁師の渡辺清志わたなべ・きよしさん(54)は「結果がどうあれ、彼らは戻ってこない」。

 渡辺さんは、最近の漁場の様子について「事故直後は意識的に漁船を避けていた大型船が、最近は事故前と変わらない操舵そうだをするようになった」と話す。

 漁協関係者によると、海自は事故後、艦艇の灯火を増やしたが、夜間に認識しづらい状況は同じで、恐怖感を訴える漁師は多いという。

 「まだ親子で船で帰ってくる気がする」。近所の女性(70)は5月上旬、千葉県勝浦市川津の寺で、静かな海を眺めていた。毎日漁に出た太平洋が眼前に広がる寺に、2人の墓がある。墓は丁寧に清められ、親子の好物だった缶コーヒーと花が供えられていた。



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