「大相撲技量審査場所3日目」(10日、両国国技館)
横綱白鵬(26)=宮城野=が“トヨタ杯の恩返し”をする。6月中旬に東日本大震災で被害を受けたトヨタ自動車系列の宮城工場(宮城県内)を訪れる計画があることが10日、分かった。野球賭博問題を受け、賜杯授与がなかった昨年名古屋場所で、同社の豊田章男社長から同社製の優勝トロフィーを特別に授与された縁で、従業員らを勇気づける予定という。豊真将を寄り切って3連勝とした横綱が、史上最多タイの7連覇を手土産に被災地へ赴く。
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白鵬が再び被災地に足を運ぶ。宮城県を訪れるのは6月中旬以降の予定で、師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)によると、すでに相撲協会に出している許可申請が下り次第、具体的な準備に移るという。トヨタの工場以外に、避難所となっている県内陸部の鳴子温泉も訪問する予定だ。
昨年7月の名古屋場所では全勝で15度目の優勝を果たしながら賜杯を受け取れず、表彰式では人目をはばからず涙を流した。ぽっかりとあいた心の穴を埋めたのが、豊田社長から受け取った“トヨタ杯”だった。
同社広報によると、昨年の名古屋場所前に横綱と偶然に出会ったという社長が、「厳しい状況で頑張る姿に感動した」と、社内で特別チームを作りトロフィーを作製。白鵬には場所後に贈呈された。賜杯以外にも外部表彰がまったくない場所だったため、白鵬は今も「15回目の優勝をした唯一の証しだから」と、大切に自宅に飾っている。
部屋として訪問する前に、相撲協会としての被災地訪問も6月上旬に予定されている。4月9日に行った福島県の石川町と平田村への訪問を足せば3度目の被災地入りとなるが、「何かを持っていくより、行くことが大事だと思います」と積極的に考えている。
本業の相撲でも気力が充実してきた。豊真将に反撃する暇を与えない一気の寄りを見せた。「内容はよかったね。まあ、あと12日間あるから、今日以上に内容のある相撲を取っていきたいですね」と自画自賛し、ミネラルウオーターを「ああ、水、おいしい」と飲み干した。
この日は長女・愛美羽(あみう)ちゃんの4歳の誕生日。07年の夏場所後に昇進した白鵬自身も、横綱として“満4歳”になろうとしている。「精神年齢は変わった。半世紀(50歳)じゃないの?」と笑ったが、土俵内外で果たすべき責任の重さは、日に日に増している。
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