イージス艦衝突 「あたご」当直士官2人無罪 横浜地裁
毎日新聞 5月11日(水)10時16分配信
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イージス艦「あたご」の衝突事故の判決のため裁判所に入る後潟桂太郎被告(右)と長岩友久被告(左)=横浜市中区の横浜地裁で2011年5月11日、小林努撮影 |
【「あたご」と漁船の進路などを図説】刑事裁判と海難審判の流れも
起訴されたのは、衝突時の当直士官だった長岩友久被告(37)と、直前の当直士官だった後潟(うしろがた)桂太郎被告(38)。両被告はいずれも一貫して無罪を主張、清徳丸のGPS(全地球測位システム)機器が水没してデータを復元できなかったことから、同船の航跡が最大の争点となった。
検察側は、清徳丸後方を航行していた僚船船長らの証言などを基に、衝突に至るまでの航跡図を作成。海上衝突予防法に基づき、清徳丸を右方向に見る位置にあった、あたご側に衝突回避の義務があったと主張した。
弁護側は「検察側の航跡図は真実と全く異なる」と批判し、海難事故の専門家に依頼して独自の航跡図を証拠として提出。「あたご後方を通り過ぎるはずだった清徳丸が、衝突直前に大きく右転・増速したことが事故原因」と反論した。
判決は、検察側航跡の根拠とされた僚船船長らの「清徳丸は(僚船の船首から)左約7度、距離約3マイルに位置していた」との供述について、信用性を否定した。
事故の再発防止のため原因究明をする海難審判の裁決は、長岩被告について「見張りが不十分」などと指摘する一方、後潟被告の行為に関しては「相当な因果関係があるとは認められない」と判断していた。
検察側は、後潟被告が清徳丸などの漁船群を「停止操業中」と誤った引き継ぎをしたことについて「長岩被告の回避措置を困難にし、衝突の危険性を生じさせた」として起訴に踏み切った。
海自艦艇の海難事故を巡る刑事裁判は、30人が死亡した潜水艦「なだしお」事故(88年)以来2例目。この事故では元艦長と死者を出した遊漁船の元船長双方が業務上過失致死傷罪などに問われ、いずれも執行猶予が付いた有罪判決が確定した。【松倉佑輔】
◇あたご衝突事故
千葉・野島崎沖で08年2月19日午前4時6分ごろ、海自イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」が衝突、清徳丸船長の吉清(きちせい)治夫さん(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が死亡した。横浜地方海難審判所は09年1月の裁決で、あたご側に事故の主因を認め、所属部隊「第3護衛隊」(京都府舞鶴市)に安全航行の指導徹底を求める勧告を出した。横浜地検は同4月、業務上過失往来危険と業務上過失致死の2罪で自衛官2人を起訴した。
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最終更新:5月11日(水)10時33分
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