ここから本文エリア 上野村の揚水式発電、注目集まる 完成すれば世界最大級2011年5月8日
東日本大震災と、これに伴う東京電力福島第一原発事故による電力不足で、完成すれば揚水式では世界最大級となる群馬県上野村の東京電力神流川(かんながわ)発電所に注目が集まっている。東電はもともと原子力を「ベース電源」とし、火力で上積みし、日中などのピーク時に水力を使う形だった。しかし、原発不信でこれまでの電力供給態勢の見直しを求める声も広がっている。 日露戦争があった1904(明治37)年から稼働している室田発電所(高崎市)をはじめ、水力発電が主力だった50年代まで、群馬は「電源県」だった。いまは需要の4分の3を他県の発電に頼っている。 県内には現在も東電と県企業局などの水力発電所が76カ所ある。最大出力は267万キロワットある。 特に、日航機墜落事故現場に近い御巣鷹山の地下500メートルに掘られた大空間にある揚水式の神流川発電所(上野村)は、稼働している1号機だけで最大出力47万キロワット。「こういう状況でご迷惑をおかけしていることもあり、工事中の2号機の稼働を予定の来年12月より前倒しできないか検討している」と東電。稼働すれば出力は倍増する。 当初計画では総事業費5550億円を投じ、今年7月の5、6号機の運転開始で完成する予定だったが、省エネや不況の影響で「電力需要が見込まれなくなった」として計画は延期している。完成後の最大出力は282万キロワットとなり、事故を起こした福島第一原発の1〜4号機の合計281万キロワットに匹敵する出力をもつことになる。 東電によれば、1、2号機と同じ空洞に4号機まで増設可能。ただ5、6号機を増設するには別に大空間を確保して二つのダムを結ぶ水路も掘る必要がある。 地元の上野村にとって神流川発電所は、巨額の固定資産税収入をもたらす「財布」でもある。「工事関係者が入ってくれば、経済効果が期待できる」といった見方も出ている。 村税収入が2億円前後の村は、05年12月に1号機が運転を開始した後、06年度には約27億円の固定資産税を得て富裕自治体に。しかし、固定資産税は、減価償却によって年約6%ずつ減り、09年度は約22億円。発電機が増えれば評価額が上がり、固定資産税も増える見通しだという。 一方、揚水式の神流川発電所は、原子力発電所や火力発電所の余剰電力で動かしている。「余剰電力に頼る以上、原発をめぐる議論の先行きに影響されるのでは」との声もある。(菅野雄介) ◇ 〈揚水式発電〉 上下二つのダムを利用し、電力の使用量が少ない深夜に原子力発電や火力発電の余剰電力を使って下部ダムから上部ダムに水を引き揚げ、電力使用量が多くなる日中に上部ダムから下部ダムに水を流下させる際に発電する「蓄電池」として機能している。神流川発電所の場合、下部が上野ダム(上野村)で南相木ダム(長野県南相木村)が上部ダムになっている。発電量の調整が不得手な原発を補完するものとして、原発反対派から批判されてきた面もある。
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