2011年5月10日4時2分
米外交当局が、自民党政権末期の北方領土問題への取り組みを、「指導力に欠けている」などと、非常に厳しく評価していたことがわかった。朝日新聞が内部告発サイトのウィキリークスから提供を受けた外交公電を分析した。
在日米大使館はロシアのプーチン首相の訪日を翌月に控えた2009年4月、日ロ関係全般についての分析を国務省に報告。「日本には、北方領土返還交渉のための計画も、計画を策定して最後までやり遂げる指導者も欠けている」と、当時の麻生政権を酷評していた。
同年2月、麻生太郎首相とメドベージェフ大統領は「独創的なアプローチ」で解決を目指すことで合意。日本側では進展への期待が高まっていた。だが、公電は、麻生首相について複数の情報源の見方として「北方領土問題について信頼できる助言者がほとんどいない。彼の指導スタイルが他人に耳を傾けることを妨げている」と指摘した。
野党・民主党についても見方は厳しく、北方領土問題では「政策の真空状態」に置かれていると指摘。新しい発想が出てこない理由として、「(02年にロシアに柔軟姿勢を示したと批判された)鈴木宗男前衆院議員を巡るスキャンダルの後遺症」を挙げた。
問題解決への日本の「本気度」を疑う記述もある。「日本は、エネルギー供給を、領土問題の速やかな解決よりもはるかに切実に必要としている」と分析。経済関係が深まる日ロ双方にとって「現状維持は受け入れ可能。それどころか好都合」と指摘している。
米側が日本の楽観的な見通しを一貫して冷ややかに見ていた様子は、他の複数の公電からもうかがえる。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。アルカイダの動きも詳述。