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秋田

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支局の目:波紋広げたトップダウン /秋田

 24日投開票の上小阿仁村長選で、異色の村長として知られた現職の小林宏晨氏が、新人で前村議の中田吉穂氏に敗れ、再選を阻まれた。村議会で「案があいまい」と3度否決された村営水道料金引き下げ案を争点に選挙戦に挑んだ小林氏。「年金生活者に思いやりが必要」と、案を再提案することを公約に掲げた。

 小林氏は、提案内容をめぐってたびたび議会と対立してきた。「政治家は言葉と行動に責任がある」と、議員批判も露骨だった。地縁血縁に左右されやすい保守的な土地柄。村民の間から「村長、なしてそんたに議員の悪口を言うのか」と、逆に批判の矢面に立つこともあった。

 小林村政を象徴する出来事に村が検討、反核団体を巻き込んで反対運動が起こり、立ち消えとなった原子力高レベル及び低レベル廃棄物最終埋設地の誘致問題がある。村長に就任して数カ月後のことだった。小林氏は今回の選挙に向け「誘致による雇用と交付金の可能性が水泡に帰した」と語り、誘致が実現しなかったことを残念がった。

 日大法学部教授を退任し、07年に行われた故郷の村長選に立候補し、初当選した小林氏だが、急激的でトップダウンとも言われたその手法は、静かな村に大きな波紋を広げてきた。小林氏は「村の人口動態は50年後の日本の姿」と見据えていた。小林村政の明と暗は、小さな自治体が生き延びる難しさを浮き彫りにしたとも言える。【田村彦志】

毎日新聞 2011年5月1日 地方版

 
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