きょうのコラム「時鐘」 2011年5月11日

 政府が浜岡原発の停止を要請した根拠は「科学的なデータ」だった。30年内に震度6強以上の揺れに襲われる確率が84%あるという

北電の志賀原発での確率は「0.0から0.1%」。島根や佐賀県の玄海原発にいたっては「0.0%」だ。数字上は発生しないことになるが、この数字を見ても安心できないのが震災というものだ

「明日来てもおかしくない」と、東海地震への警戒は40年間以上続いている。その間に阪神、中越、能登と、すべて予測外の場所で大地震は起きた。だから、厄介なことに東海地震の84%も能登の0.1%も、そう違いはない

阪神大震災発生3日前の新聞にこんな記事があった。「このところ地震が多い。首都圏で防災用品売れる」。関西でこれを警告と受けとめる人はなかった。今回の大震災も2日前に前兆ともいえる震度5弱の地震が三陸沖で起きている

自然が警告を発しても人間は理解できない。かといって科学を無視すればその直後にも災いは来るかもしれない。科学に頼ることは宗教的な強迫観念に似ている。恐ろしい迷路に入り込んでいるのを自覚せねばなるまい。