災害とデマ
〜 情報を見分ける目 〜


読者の方からこのようなメールを頂きました。

「阪神大震災のときレイプが多発したというのは本当ですか?
被害者が大勢いたにもかかわらず報道されなかったのは復興へのイメージダウンを避けるためと聞きました。」

結論から言ってしまえば、これはデマのようです
「物語の海、揺れる島」(与那原恵・著/小学館)という本で、この事について詳しく書かれています。

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▲「物語の海、揺れる島」(小学館の紹介ページ

この本の中にある「作られた伝説―神戸レイプ多発報道の背景」の内容を要約すると、

「ある団体が震災1ヶ月後に電話カウンセリングを開設した所、30数件の性的暴行に関する相談があった」という記事が地方新聞に掲載された。
その情報は、様々なメディアや人権団体などで取り上げられたのだが、
他の団体にはそういった相談が来ていない事や、警察の記録に残っていない事、その団体の言っている事の裏が取れない事などを、その団体の代表者に問い詰めた所、捏造だと分かった。

というものです。
全く無かった、とは言い切れませんが、多発していたということはなさそうです。

このような“本当のような嘘”が現代のメディアで伝えられたという事は、非常に驚かされます。



災害に流れるデマには大きく別けて2種類あります。
ひとつは、内容が荒唐無稽なデマ
関東大震災の時に流された「ヨーロッパが日本を潰す為に起こしたものである」「朝鮮の人が暴動を起こそうとしている」「無政府主義者が革命を起こそうとしている」などといったデマは、これの最たる例でしょう。

これの特徴は、災害の直後なのに再び別な危機が迫っているという内容で、パニックを引き起こすという点があります。また、広まるスピードが非常に速く、関東大震災の場合、数日後には日本全国に伝わってしまいました。しかし、しばらくたって冷静に判断してみると、伝えられた情報に疑問を持つ人が出始め、すぐに沈静化してしまいます
最近でも、大きな地震があった後に流れる「○月×日にもう一度大きな地震がくる」というような噂もこれにあてはまります。

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▲関東大震災の時の写真

もうひとつは、信憑性のありそうなデマ。テレビ・ラジオなどのメディアの情報が多くの人の間で伝わっているうちに、伝言ゲームのように内容が歪んでしまった情報や、元は誰かの想像にすぎなかった事にもっともらしい理由が付けられた噂などが、これにあてはまります。最初に紹介した「阪神淡路大震災直後にレイプが多発した」というのはこれに含まれるでしょう。

こちらの特徴としては、親戚・知り合いなどのネットワークを通じて伝えられる、ということが挙げられます。そのため、伝達のスピードは遅いのですが、親しい人からの情報な上に、伝える人は親切心から教えているので、伝えられた人も信じてしまいやすいのです。しかも、もっともらしい理由が付けられているため、長い間信じられてしまうのです。



もし、災害に遭ってしまった時、誤った情報に流されてしまうのは非常に危険です。
こういったデマに惑わされないためには、常日頃から情報を見分ける目を鍛えておかなくてはいけません。


おや?またメールが届きましたね。どれどれ・・・

「家にこんなハガキが届きました。
全然身に覚えがありません。マジ怖いです。
調べてください。

最終支払命令書(以下略)」

情報を見分ける目を鍛えましょう。



( 探偵ファイル・千明 )


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