「危険な普天間飛行場を一日も早く返還してほしい」。日米が同飛行場返還に合意して15年。市民グループが12日、同飛行場周辺で風船を掲げた抗議活動は、米軍が沖縄防衛局を通じて中止を求め、一時緊張も走った。だが、一般空港ではない同飛行場周辺で、掲揚物の高さを規制する国内法は見あたらない。日米地位協定により、米軍には最低安全高度の規制も適用されず、米軍が示した強い警戒心は、市街地で運用される同飛行場の異常さを、図らずも示した形だ。(社会部・知念清張、中部支社・磯野直、川上夏子)
宜野湾市の女性でつくる「カマドゥ―小たちの集い」と普天間爆音訴訟団のメンバーが掲げたのは、直径90センチの風船で約20個。嘉数高台や佐真下公園など7カ所で午前9時から午後5時まで断続的に掲げた。
「風船が切れて飛ばないように」と、つり糸で結んで固定。風向きでも異なるが、約20メートルから最大50メートル上空までに浮かべたもので、法的に問題はない。
防衛局に要請
「非常に危険性があるので、防衛局の方で対応していただきたい」
米軍から沖縄防衛局に中止要請があったのは、風船が揚がり始めた午前9時。防衛局や県警が各地点で監視した。嘉数高台には県警のパトカー3台が駆けつけ、現場を確認し、正午すぎにはほとんど引き上げた。宜野湾市職員は、二つの公園を確認。市民の迷惑にならないよう配慮を求めた。
一方、滑走路の延長上にある上大謝名区では基地内からMP(米軍警察)が巡回し、監視した。フェンス近くの住宅地では県警と防衛局職員が中止を求め説得。メンバーの活動を撮影するなどピリピリムードが続いた。
危険性関心を
航空法では離着陸時を除いて、人家の密集している地域の上空では、最も高い障害物(建物)の上端から300メートルが最低安全高度とされる。人家のない所でも150メートル以上の飛行が定められているが、日米地位協定によって米軍には適用されない。
返還合意から15年たっても、騒音や低空飛行、夜間の旋回訓練などへの苦情は後を絶たない。
「カマドゥー」の国政美恵さんは「(東日本大震災の)トモダチ作戦で、海兵隊は評価されているが、本来は被災者支援の組織ではない。米軍は沖縄で住民に毎日嫌がらせをしている」と訴えた。
また、知念ウシさんは「事故が起きて一番困るのは宜野湾市民をはじめとする県民。風船での抗議は小さな試みだが、普天間の危険性にもっと目を向けてほしい」と話した。