2011年5月4日23時43分
東京電力は4日、福島第一原発1号機について、今月中旬から原子炉を安定した状態で冷やすシステムづくりに向けた作業に入ると発表した。格納容器内の水を外に引き出して仮設の装置で冷やして戻す仕組み。今月末にもシステムを稼働させたいという。2、3号機も7月までに同じ仕組みを導入する予定。
東電によると、1号機では核燃料の入った原子炉を格納容器ごと水に浸す「水棺(すいかん)」と呼ばれる作業が進められている。
今回の冷却システムは、格納容器内に窒素を注入する配管を利用して新たな配管をつなぎ、核燃料で熱せられた水を外に取りだすというものだ。
従来の運転で使われていた冷却システムの復旧については、高い放射線量の部屋に主要な機器があり、作業が困難なことなどから復旧は難しいと判断した。
冷却の仕組みは2段階。まず格納容器の水は原子炉建屋の機器搬入口に設置した熱交換器にポンプ(毎時100トン)で送られ別のルートの水に熱を伝えて冷やす。熱を受け取った水もポンプ(毎時200トン)で建屋横の装置に送られ大型ファンによる風で冷却する。これまでの毎時数トン規模の注水と比べ格段に冷却能力は高まる。
空冷式の装置の設置は8日に着手。熱交換器の設置や配管工事は、16日から始める。工事を終えて、冷却装置が稼働するのは早ければ5月下旬の見通し。これ以降、数日間で炉内の水の温度が100度未満になることを目指すという。
一方、熱交換器の設置には、高い放射線量になっている原子炉建屋内での配管設置などの作業が必要だ。放射線量を少しでも下げるため、建屋内に浮遊する放射性物質の除去装置の備え付けに向けた準備作業が4日も行われた。
5日には装置を作動させ、8日から作業員が建屋に立ち入れるようにし、原子炉建屋内の計測機器を修理、点検するという。
2、3号機も同じシステムを設置するが、いずれも格納容器が壊れて水がたまらない可能性が高い。壊れた部分をセメントなどで埋める作業も必要になるとみられている。(坪谷英紀)