福島第1原発の事故により「計画的避難区域」に指定され、全村避難が求められている福島県飯舘村。この村で農業を営む伊藤延由さんは2011年5月9日、村を訪れた東京電力の清水正孝社長に直接抗議文を渡し、同社の加納時男顧問の「解雇」を求めた。伊藤さんは5日の朝日新聞に掲載された加納氏の主張に「人格を疑う。即刻解雇するべき」と語気を荒げた。
東京電力の清水正孝社長は9日、福島第1原発の事故後初めて同村を訪れ、謝罪した。伊藤さんはその直後、飯舘村役場の玄関先で、清水社長に向かって自らの思いをしたためた抗議文を朗読したのち、抗議文を渡した。伊藤さんは農業の安心・安全を取り戻そうと、昨年、同村で農業を始めたばかりだった。
伊藤さんの抗議文は、5月5日付けの朝日新聞紙面に掲載された、東電の加納時男顧問の発言に関するもの。紙面で加納顧問は「低線量の放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。説得力があると思う。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った」と主張している。ニコニコニュースの取材に対し伊藤さんは、「そんなことを言う科学者に直接お会いしたい。放射線治療は理解できるが、それは医者の管理のもとで放射線を照射するもの。飯舘村で24時間365日高濃度の放射線を浴び続けることが本当に健康にいいのか。科学的に正しいのかお聞きしたい」と怒りをあらわにした。
なお、この発言に対しては、ソフトバンク社長の孫正義氏もTwitter上に「どう思います?」と疑問を呈した上で、「この様な偉そうな方を未だに現役顧問に仰ぐ東電と原発推進派議員達の気がしれない」と厳しい言葉を発している。
定年退職したのち、孫に安全なお米を食べさせようと同村で水稲農業を始めたばかりだという伊藤さんは語る。
「飯舘村にだって子どもや若者がいるんですよ。もし孫がいたら、本当にここへ来て子どもを育てられるのかと面と向かって言いたい。事故を起こしておいて、この主張は(加納氏の)人格を疑う。(東電は)即刻解雇するべきです」
(三好尚紀)