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【千葉】肌で感じた 被災地 本紙記者がボランティア2011年5月10日
千葉市の特別支援学校教諭渡辺俊夫さん(51)が主催した災害ボランティアバスの参加者が、大型連休中の四月二十九日〜五月一日、東日本大震災で被災した宮城県岩沼市で泥のかき出しや仮設住宅の引っ越しに汗を流した。記者も一人のボランティアとして加わった。 (宇田薫) 首都圏に住む十〜六十代の五十六人が参加。二十八日午後十時半すぎに千葉市を出発して翌朝、岩沼市に着いた。大半がボランティア初心者で、一人で来た若い女性も多い。袖ケ浦市の会社員森瑞恵さん(33)は「能力も考え方も違う個人(単位)では、受け入れ側の負担になると思った」と話す。 記者を含む渡辺さんの団体には初日も仕事が割り当てられたが、岩沼市災害ボランティアセンター(VC)では早朝から、個人単位の参加者四百人近くが仕事を求め行列をつくった。三十分ほどしてスタッフが「きょう(仕事に必要な人数)は百五十人です」と呼び掛けた。一人の男性が「列のどこが百五十人なのか示して。待つ方も時間の無駄」と食ってかかる一幕も。 三十日も、約五百人の希望者をさばこうとスタッフがてんてこ舞い。列の最後尾にいた都内の男性会社員(39)は「手助けに来ているのか迷惑を掛けに来ているのか」と苦笑。 渡辺さんの団体はこの日、海岸線から約二キロ離れた養鶏業大内熊治さん(83)方の掃除に向かった。千二百平方メートルの敷地に母屋と鶏舎、ビニールハウス。水浸しの家財道具が外に出され、うっすらふん尿のようなにおいも。鶏舎のケージの一角には、ニワトリの死骸が横たわっていた。 約十五人で、ニワトリのフンの乾燥場だった約二百平方メートルのビニールハウスの片付けに取り掛かった。山積みになった枯れ草をくま手で集め、ごみ袋に詰める。枯れ草は周りの田んぼから流れてきたイネや海岸の松の枝葉だ。茶色いほこりが舞い、ゴーグルも汗で水滴まみれになり、使い物にならなかった。 足でスコップを押し入れて、泥をすくい上げる。重みで腰がビリビリと痛んだ。丸一日の作業で、片付けは三分の一も終わらなかった。「気が遠くなるね」と一人がつぶやく。鶏舎とハウスの掃除は一日も続けたが、最後まで終わらず、後ろ髪を引かれる思いで大内さん宅を後に。庭には、運び出した土のう袋が高さ二メートルの山になっていた。 大型連休中はボランティア、受け入れ側の双方が苦労したようだ。VCの窓口に並んでも仕事がなく、被災者宅に「仕事させて」と押しかけるボランティアも。大内さん宅では「トラブルが生じたら責任が持てない」と、VCを通さない参加は断ったという。 今回、実際に被災者が直面する現実を、肌で感じた手応えは大きかった。川崎市の会社員岡野浩美さん(41)は「力仕事の印象があったけれど、仮設住宅に支援物資を配布するなど、女性や高齢者も役に立てると知った」と話す。 活動を終えて数日後、岩沼市を再訪した渡辺さんから、大内さん宅の写真が届いた。山積みの土のう袋はなくなり、玄関には「ボランティアの皆さんありがとう」と書かれた紙が掲げられていた。 PR情報
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