47トピックス

▽わかる原子力(3)  汚染された食品の基準値


                   

 放射性物質に汚染された食品の摂取基準は個々の食品について決まっている。ホウレンソウを含む野菜の場合は1キロ当たりセシウムが500ベクレル。これ以下なら摂取してもリスクは少ないとの判断だ。葉野菜ばかり1キロ食べることは通常ありえないが、水やホウレンソウなどの野菜、魚・肉類を複合して食べた場合はどうなのだろうか、といった疑問が聞かれる。加えて空間からの外部被ばくもある。摂取した個々の食品がそれぞれ基準値以下であっても、こうした被ばくが重なった場合、危ないのではないか。

▼ 食品の放射能の基準値の決め方

 この基準値はどんな計算に基づいて決められているのだろうか。それは汚染された水、牛乳・乳製品、野菜などをひっくるめて1年間食べ続けた場合の被ばく量から計算されている。
 放射性ヨウ素の場合では、飲料水、牛乳・乳製品、野菜などそれぞれ全てが汚染されている場合を想定して計算されている。具体的には、ヨウ素の場合、甲状腺に集まることから、甲状腺(等価)線量年間50ミリシーベルトを基礎として、その3分の2の線量を、飲料水、牛乳・乳製品、野菜の3つの食品グループへ均等に3分の1ずつ割り振る。つまり、2/3×1/3×50で各食品グループでは年間約11.1ミリシーベルトとなる。ここから日本人がこれらの食品を一年間摂り続けても割り振りの被ばく量を超えないように、それぞれの食品の基準値を算出している。この計算は年齢別の放射線に対する影響の違いも考慮されており、乳幼児や子供の食品の摂取量や被ばくに対する影響度を反映させて最終的に基準値を設定している。
 このように食品だけに関して言えば、基準値はさまざまな種類の食品を摂取することを想定し、全体として健康へのリスクが上がらないように設定されているといえよう。
 ここで一つ疑問は、放射性ヨウ素に関しては、先述の3つのグループを設定した後に魚介類への暫定基準が設けられたが、それでも大丈夫なのかということだ。これは、始めに3つのグループに割り当てるとき3分の1は空白に設定されたことと関係がある。3つのグループ以外からの内部被ばくに対する余裕が作られていたということだ、ここに魚介類の暫定基準が割り当てられたと考えられる。よって、魚介類も基準値以内であれば、甲状腺等価線量年間50ミリシーベルトの上限は超えないと言える。
 これらの基準は日本人の平均摂取量を基にされているため、当然平均以上の量を食べた場合、その被ばく量が多くなってしまうことも考えられる。しかし、現在基準値を超える食品、飲料水は一般家庭に出回らないよう国によって厳重に検査されている。もともとかなり安全側によった基準を採用しており、また、その基準を超えた食品の管理が徹底されている限り、実際に食品からの内部被ばくで大きな被害が出る可能性は小さい。

 セシウムに関しては上限5ミリシーベルト(※1)で、基準値は同じような考え方に基づき計算されている。ただ、セシウムは肉類にも含まれることがあるため、食品グループが5つになっている。
 その他、プルトニウム(※2)やウランなども基準が設けられているが、福島第一原子力発電所の事故では、毒性の強いこれらの元素は原子炉付近以外ではほとんど検出されておらず、今のところ心配の必要はない。

 もう一点、ストロンチウムは、水に溶け、体内にも蓄積しやすいため危険であると考えられるのに、放射性ストロンチウムの基準が設定されていないように見える。これはセシウム137がストロンチウム90を必ず伴うため、そこから換算しセシウムの基準値を決めているから基準に織り込んであるといえる。

 最後に、放射線被ばくを考える際、細胞レベルで考えれば分かりやすいと思う。細胞から見ると放射線の影響は内部被ばくと外部被ばくに違いがない。細胞のどの方向から放射線が来ようが、放射線による物理的な影響は関係ないためだ。シーベルトという単位が使われていれば、アルファ線やベータ線、ガンマ線の影響力の違いを換算してあるため、結局はどの部位に何シーベルト被ばくしたかが問題となる。これを考えると、内部被ばくだけでなく、外部被ばくも考慮して安全性を考えなければならないことがわかる。よって空間線量の高い地域ではより注意が必要であるといえる。

【参考】

内部被ばくの計算方法、各種設定値は厚生労働省の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」から計算できる。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r98520000015cfn.pdf

※1 食品安全委員会では、「ICRP の実効線量として年間 10mSv という値について、緊急時にこれに基づきリスク管理を行うことが不適切とまで言える 根拠も見いだせていない。これらのことから、少なくとも放射性セシウムに関し実効線量として年間5mSv は、食品由来の放射線曝露を防ぐ上でかなり安全側に立ったものである」としている。
※2 正確にはプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種

(2011年5月10日 前川静剛)

記事一覧

【アメーバ型経営】震災前は集中・集約・効率化、トップダウン経営。震災後は分散、非効率も利点に

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック≪参加新聞社の社説・論説・コラム(一覧)≫こちらをクリック【茨城新聞】<いばらき春秋>■震災前には集中・集約・効率化が理想的な行動規範。震災後は… 震災前にはオール電化にしようかと考えていた。風呂の給湯や料理に使うコンロはプロパンガスに頼っているが、電気に一本化すれば、節約になるだろうと見込んでいたから震災直後に一転、生活を助けてくれたのがガスだった。電気や水道が断たれる中でガスコンロの火は希望だった。水さえ確保すれば温かい食事が食べられる。心の余裕になった震災前には集中・集約・効率化が理想的な行動規範。トップダウンの組織運営が有効だ。しかし震災を経ると、分散・非効率という状況に対してもリスク回避という利点が認められていると思う京セラ創業者で日本航空会長の稲盛和夫氏がアメーバ型経営という言葉を使っていた。小集団のリーダーに…【続きを読む】

【東日本大震災…共同通信のニュース】原発20キロ圏内を警戒区域 持ち出しは貴重品に限定

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ■きょうのトップニュース(4月22日夕刊)東電社長、原発事故で知事に謝罪 県側、収束と賠償要求   東京電力の清水正孝社長は22日、福島県庁で佐藤雄平知事と面会し「福島第1原発の重大な事故が起き、福島県民の皆さまに大変なご迷惑をお掛けしたことをあらためて心から深くおわびします」と直接謝罪した。清水社長は過去2回、面会したい意向を伝えていたが、3回目で実現した。  佐藤知事は受け入れた理由について「収束に向けた道筋を必ず実行してもらうことを約束してもらうため」と説明。福島原発について「再開なんてあり得ない」と認めない姿勢を伝え、一刻も早く事態を収束するよう求めた。  農水産業だけでなく、製造業や観光業を含めた賠償も要求。現場で収束に当たる作業員らを「あの人たちは福島の希望の星だ」とたたえ、待遇改善も要求した。………(20…【続きを読む】

【東日本大震災】参加新聞社の社説・論説・コラム(4月21日)歌を忘れたカナリア/リサイクル社会江戸/新聞の役割

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ≪参加新聞社の社説・論説・コラム(一覧)≫こちらをクリック 【東奥日報】<天地人> ■科学の世界や科学技術行政は、そうした健全な批判派を隅に追いやってきたのではなかったか  炭坑に入るとき、先頭に立つ坑内員はカナリアを入れた鳥かごを提げたという。カナリアは人間よりずっと敏感だから、わずかでも有毒ガスが漏れているとぐったりする。危険サインを出す小鳥に男たちは命を託していた。  科学者は「社会のカナリア」になればいいのだと宇宙物理学者の池内了さんはいう(「科学者心得帳」みすず書房)。炭坑のカナリアと同じように警告を発し続ける。初めは小さな声でも、やがてみんなに聞こえるようになると信じて行動する。それが科学者の責任だと説く。  3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首が原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長に迫った…【続きを読む】

【東日本大震災…共同通信のニュース】原発20キロ圏内を警戒区域 持ち出しは貴重品に限定

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ■きょうのトップニュース(4月22日夕刊)東電社長、原発事故で知事に謝罪 県側、収束と賠償要求   東京電力の清水正孝社長は22日、福島県庁で佐藤雄平知事と面会し「福島第1原発の重大な事故が起き、福島県民の皆さまに大変なご迷惑をお掛けしたことをあらためて心から深くおわびします」と直接謝罪した。清水社長は過去2回、面会したい意向を伝えていたが、3回目で実現した。  佐藤知事は受け入れた理由について「収束に向けた道筋を必ず実行してもらうことを約束してもらうため」と説明。福島原発について「再開なんてあり得ない」と認めない姿勢を伝え、一刻も早く事態を収束するよう求めた。  農水産業だけでなく、製造業や観光業を含めた賠償も要求。現場で収束に当たる作業員らを「あの人たちは福島の希望の星だ」とたたえ、待遇改善も要求した。………(20…【続きを読む】

【東日本大震災/福島第1原発事故】地震・原発-Q&A/「警戒区域」 立ち入り制限、罰則も

 ≪参加新聞社の福島第1原発事故関連ニュース(一覧)≫こちらをクリック  ≪福島第1原発の現状≫こちらをクリック  ≪各地の放射線量≫こちらをクリック  ≪地震・原発-用語解説≫こちらをクリック  ≪地震・原発-ドキュメント≫こちらをクリック  ≪原発関連の動画ニュース≫こちらをクリック ■「警戒区域」 立ち入り制限、罰則も  福島第1原発から半径20キロ圏内が警戒区域に設定された。  Q その区域はどうなるのか。  A 自治体職員や警察官ら災害応急対策にかかわる防災関係者以外は、区域への立ち入りが制限されたり、禁止されたりする。立ち入った場合、退去を命じられる。違反すると10万円以下の罰金、または拘留という刑罰を科せられることもある。………(2011/04/21 19:56)【共同通信】<記事全文> ■被ばくの「積算」が問題に 組織、臓器で影響に違い  福島第1原発から放射性…【続きを読む】

【東日本大震災】地震・原発関連ニュース-総合一覧

 東日本大震災の被害状況(4月20日午前10時現在、警察庁まとめ)   死   者…1万4013人(宮城8505人、岩手4033人、福島1412人)   行方不明…1万3804人(宮城7934人、岩手3822人、福島2044人)   合   計…2万7817人 ≪写真ニュース特集≫こちらをクリック  ≪写真ニュース特集(一覧)≫こちらをクリック ≪震災特別寄稿 日本の友人たちへ≫こちらをクリック ≪共同通信社のニュース≫こちらをクリック ≪参加新聞社のニュース(今日)≫こちらをクリック  ≪参加新聞社のニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪福島第1原発事故関連ニュース≫こちらをクリック  ≪参加新聞社の福島第1原発事故関連ニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪食の安全に関するニュース≫こちらをクリック  ≪食の安全に関するニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪…【続きを読む】

【坂上二郎さん死去】たれ目の欽ちゃんの要求はいつだって、とても理不尽だ

■コンビを結成したのは1966年。世の中は、豊かさを目指して懸命に走っていた  【北海道新聞のコラム】“ちっこい目の二郎さん”は小太りの身をいつもよじらせていたような気がする。“たれ目の欽ちゃん”の要求はいつだって、とても理不尽だ……▼コント55号がコンビを結成したのは1966年。世の中は、豊かさを目指して懸命に走っていた。残業、残業は当たり前。パートで働く主婦が増える一方で、「教育ママ」という言葉も生まれた。子供たちは学校が終わったあとに学習塾に通い始める▼欽ちゃんが「時代の狂騒」を、二郎さんは、それに翻弄(ほんろう)される「普通の人々」を象徴していたと見るのは、うがちすぎか。……小指と人さし指を立て「飛びます!飛びます!」。裏返り気味の高い声のギャグが耳に残る。本当に飛んでいってしまった。(2011年3月11日付「卓上四季」) ≪全文を読む≫ ■戦後の高度成長を必死に引っ張ってき…【続きを読む】

≪特集・大相撲八百長問題≫大相撲夏場所開催、横審が要請 全委員一致の意見で

■八百長問題を引き起こし、信頼を裏切った責任は重い  【山形新聞のコラム】▼▽大相撲の思い出はテレビの草創のころと重なる。わが家でテレビを買ったのは遅い方だったから相撲の時間が近づくと近所の家を訪ねては見せてもらった。翌日の新聞の星取表でまた勝敗を確かめる。四股(しこ)名から習わぬ漢字も覚えた。……… ▼▽そんな子供のころから相撲を長年楽しんできた一ファンとして、まさか本場所が中止に追い込まれる事態になるなどとはいまだに信じたくもなく残念でならない。多くのファンにとっても心にぽっかりと大きな穴が空いた思いだろう。八百長問題を引き起こし、信頼を裏切った責任は重い。 ▼▽本来であれば、きのうは春場所の新番付が発表になる日だった。代わりに力士の待遇に反映する序列が示されたが、八百長メールで名前の挙がった力士の四股名もあった。不祥事にまみれてもなお、大相撲の再生に期待を寄せ、楽しみにしているフ…【続きを読む】

ロード中 関連記事を取得中...


コメント

この前川静剛と言う人は、酷い記事を書くと、ネット上でも噂になっていますよね。各社、社説は良く見ていますが、前川静剛という人ほど、適当な社説を書く人はそうそう居ないのではないでしょうか。前回の記事でも、「・・・・思う」「・・・と思う」との語尾を連発していましたし、こういう人の記事を載せている共同通信社自体が、信頼を失墜させていると思いますが。

投稿者 匿名 : 2011年05月10日 18:34

被爆は、極力、避けなければいけません。ICRPと日本の法律では、1年間に1ミリシーベルトという規準が決まっていました。ところが、原発事故が起こってから、急に50ミリシーベルトや100ミリシーベルトという数字が出てきて、高濃度汚染した食品を摂取しても安全と宣伝するんですか。汚染した食品はすべて東電と政府が買い取って、市場に出回らないようにしないといけません。やるべきことは、汚れた土地を除染することです。汚染した食品は安全で、消費することは被災地を応援することになると騙して流通させたり、地産地消といって給食に出し、子供に食べさせることを煽るような記事を書かないでください。私たちには、未来があります。

投稿者 大家 角義 : 2011年05月10日 15:27


コメントをお寄せください