« 松永英明さんへインタビュー ③ | トップページ | 松永英明さんへインタビュー ⑤ »

2006年4月24日 (月)

松永英明さんへインタビュー ④

R30 :実際オウムの危険性みたいなものを批判する人というのも、ほとんど密教の部分のヴァジラヤーナの中のマハームドラーとかの教えがそもそも最大の問題なんだと言っている人たちがいるんだけど、そこはコアなのでという認識ですか。

松永 :というよりも、完全にコアなのは、五仏の法則が、実践されたということになっているということでしょう?

R30 :でもさ、そこは松永さん自身も伝聞なんでしょ?

松永 :だから、五仏の法則が説かれていて、そこで例えば人を殺したとかそういう教えが書かれているから危険だという話があるから、今こういう風に言ってるけれども、実際それに基づいてあの事件が起こったのかというと。

R30 :わかんない。

松永 :わかんない。

R30 :ですよね。早川さんが、麻原さんから「五仏の法則を実践しろ」と言われてやったかどうかはわかんないわけですよね。

松永 :それはわかんない。むしろ、そういう風には言われてないだろうと。例えば仮谷さん連れてきて、注射の量間違えました。睡眠薬の量間違って殺してしまいました、と。・・・間違えそうだなぁみたいな。

R30 :そういうレベルなのか。

松永 :そう、投与量を間違うなよ、みたいな。だから、すごく鈍くさい集団だという。科学技術省に何ができるんですかみたいなね。失敗ばっかりしてたって。だから「サリンが出来てたって!」「えーーー?」みたいな。「そんなの作る能力あったの?」みたいな。

佐々木 :途中何度も何度も失敗してますよね。

松永 :でしょう?で、実際作ったのは土谷さんだったけど、

佐々木 :吸い込んで息も絶え絶えになったりとか、

松永 :でもね、土谷さんはね、あの人は作るかもしれんなと、ちょっと器用だから。

R30 :極めて俗人的なところで、あの人ならやれたかも程度の?

松永 :そう、うん。でなかったらもうねぇ、村井さんが全部指揮してたらみんな死んでるよ。自分たちが死んでるという。それくらい、科学技術省って何もできてなかったし、空気清浄機なんかは、何とか作ってたけれども。冗談で、ダンボールにガムテープで飛行機を造るんじゃないかと言ってたくらいのね、そういうの技術力だった。

佐々木 :サティアンで見つかったいろいろな物品があるじゃないですか、試作品とか。あのレベルの低さとサリン事件が、かなりマッチしない不思議な感じってのは当時言われてましたよね。

松永 :そうそうそう。あんまり言うと怒られるんだけど、科学技術省の技術力のなさと、個人的に土谷さんの技術力。あの人は実際何でも作れるという印象はみんな持ってた。

R30 :そうすると、五仏の法則は教えが核だったとここでは言ってらっしゃるけど、それが本当にそうだったのかという総括も教団としてはね。

松永 :教団としては、今のところ五仏の法則を封印すると、

R30 :と言ってるわけなの?

松永 :そうそうそう。

R30 :じゃそれは公式見解になってるんだね。

松永 :そうです。それは、その部分がなくても、宗教的に自分たちの信仰を捨てるということにならない。だから、何もかも危険だと言うんだったらおかしなことになってくるんで。例えば、基本的な戒律で、不殺生、不偸盗というのがあって、殺すなというのが最初に来るわけで、だからゴキブリも殺さないとか、みんな日々守ってるわけだけどね。ねずみも殺さない。蚊に刺されて追い払っても、「これは嫌悪が出てる」と言って反省するぐらいの人たちだから。そのくせに人殺すと言って批判されるわけだけど。だからその辺は、一般の今いる信者は、すごく結びついてないっていうの?五仏の法則を実践しようなんてバカな人はいないし。

R30 :なんか原始仏教つーかジャイナ教に近いね。ジャイナ教というのは、インドの中でも殺生に対して極端に潔癖な宗派で、歩く時には、ほうきを持ちながら前の道をかきながら歩くと言われてる人たちで、虫を踏まないように。

 :あー、いますね。

松永 :そこまではやんなくてもね。

佐々木 :松永さんはこれからどうするつもりなんですか。

R30 :っていうか、それってレベル的に言うと、卑近な経済問題の話。

佐々木 :今回オウムということが明るみになってから、社会的な影響はあったんですか。

松永 :2つほどプロジェクトとか大きいところを切られたというのはあります。

佐々木 :それ以外に何か影響あったんですか。仕事以外プライベートで何か問題ありました?

松永 :仕事以外では、体調の問題。

佐々木 :体調が悪化したのは、それが原因なんですか。

松永 :ある意味精神的なものもあるだろうと思うので。流石に2月の末の野田さんがネットに出したところでは、非常に精神的にやられて、それこそ11階から飛び降りようかと。教団から出た途端にこれかよみたいなね、それはあった。

佐々木 :でも前は、河上イチローの時は自ら意図している部分もあったわけでしょ?

松永 :あの時は、サイトをゆっくり閉じようとしていて、そしたら西村新人類さんがばらして、あの時は教団の中に「もういる」という感じだったから、ある意味回りにも人も多いしという。

佐々木 :今回だって、オウム真理教の信者だった河上イチローであったということをカミングアウトしつつ仕事を続けるという可能性は考えなかったんですか。当初、野田さんに書かれる以前の段階で。

松永 :以前の段階ではというか、本当に教団を飛び出したのが結構最近なので、もうちょっと落ち着いてからだったら、「実は」みたいなことはあったかもしれないけど、まだそういうレベルじゃないというかね。

佐々木 :それはもう少し仕事として評価を高めてからというか、或いは

松永 :ていうか、出てかなり落ち着いてからというか

佐々木 :それは気持ちとしてということですか。

松永 :そう。だから、現役の時に「実は信者なんです」と言って、わざわざ仕事を潰すことはないし、例えば教団を出て1年くらい経ってからだったら、それは完全に過去の話で済んでしまうというね。
それも有り得たけど、野田さんが功を焦って、民主党つぶしのネタを探して、うちのサイトにたどり着いてしまって、そしたらとりあえずこれだけでもネタにはなると。

R30 :まーね、あれは本当にひょうたんから出た駒なんだよね。

松永 :本当にそうよ。しかもそれがたまたま彼の知ってる人間だったという。

佐々木 :河上イチローの時は、当時日本のインターネットはまだあんまり発展してなくてスフィアも小さくて、その中で縦横無尽に空間をコントロールしているかのような感じがすごくあったんですけど、河上イチローという存在がね。今回はどちらかと言えば、逆に飲み込まれちゃってるような感じがあって、逆にその辺はどう見ていらっしゃるのかお聞きしたいですけどね。

松永 :だから、今の状況は、体調もあって対応しきれてないというところで、本当だったら『オウム・アレフ(アーレフ)の物語』でもザザザとある程度まとめて書いてやってしまえば早かったんだけれどという。或いは、もうちょっと体調が良ければ強気に。強気というのは変だけど。

R30 :情報戦に果敢に撃って出てたかも?

松永 :というよりも、淡々と表の記事を更新するとか。本当は書きたい記事が幾つかあって、こないだ潰れた自費出版の件だとか、自費出版商法の話とか。あとmixiでできないことをやるソーシャルネットワークを自分で作ろうみたいな話とか、そういうネタは幾つかあって、それを淡々と出していれば、何となく

R30 :まあ、埋もれていくわねぇ。

松永 :松永さんって感じでイケる。

R30 :流石微動だにしない、みたいなね。

松永 :だけど、書くだけの力は今はないと。

佐々木 :でも今回のことが原因で体調を崩しているわけだから、連動はしているわけですよね。

松永 :うん。

佐々木 :直接、トラックバックとかコメントとか他の人のブログとか以外で、批判のコンタクトとかってあったんですか。メールが来たとか電話があったとか。

松永 :メールで批判は来ないんです。むしろメールで応援は来るけど。わざわざ「バカヤロー」というメールが届くことがないよね。2ちゃんねるとかで叫ぶ分にはできるけども、直接メールを送るのはおそらくこわいらしい。

佐々木 :そうでしょうね。

R30 :日本ってそれがすごいよね。ある意味、アメリカとかだと多分ヘイトメールとか山ほど来ると思う。

松永 :なんかオフ会の話でもね、2ちゃんねるの連中は来ないらしいから。

 :アレ本気でやってくれればね。本気でオファー来るなら出ますよ。(一同笑)

松永 :それくらい自分が全く相手から見えないところから石投げたいという人が多くて。

一同 :うん。

松永 :それは、あっちから投げてやがるなと思っていれば済む話なんで。

佐々木 :野田さんがアレを書いた後にどっちがコンタクトを取ったんですか。

 :私かな。

佐々木 :野田さんがアレを書いた後に松永さんと泉さんは、どうやって連絡を取ったんですか。

 :書いたあとに?書いた後にはどっちからでしたかね。

松永 :それまで普通に連絡のやり取りがあったから。例えば「野田さんから連絡があったんだけど」とか「取材が入ったんだけど」とかね。

 :私取材拒否はしてないんですけど、取材拒否したことになってますね。

佐々木 :取材の申し込みはしてきてたの?

 :ありましたよ。

佐々木 :2人ともに?

 :メールの内容がものすごく衝撃的だったんですよね。

松永 :野田さんがネットに書いた時に、こちらから電話かけて「うちの番号はこれだからかけてこい」と留守番電話に入れといた。そしたら、全然かけてこなくて、『FLASH』の締め切りの前日にかけてきて、「確認だけど」ってお前、今頃かけてくんな(笑)

 :私も電話かけたんですけど、出ないんですよね。

佐々木 :元々面識あるんでしたっけ?

松永 :元々河上時代の時に、公安調査庁の名簿が流れたという事件があったんですよね。それが、うちのサイトも踏み台になっていたという。うちの掲示板を利用されていたと。『世界のスパイ組織』というコーナーもあったので。今は別のサイトに譲ってあるけど。

佐々木 :その時には野田さんはもう公安調査庁を辞めてたんでしたっけ。

松永 :その時にはもう辞めてて、逮捕されてた時期ですよね、ストーカー事件で。

佐々木 :そうかそうか。

松永 :それで出てきましたとか言って、その辺でやり取りがはじまって、その後厄介だったのが、宮崎学の二重スパイ騒動というのがあって、野田さんが宮崎学を敵に認定したんですよ。あの人、敵認定すると粘着するんで。そうすると、「宮崎学と非常に親しかった河上イチローは、敵」となって。宮崎さんが選挙に出ようとしますよね。その時に河上イチローが手伝っているに違いないって。だから「違うから」と言って話し合いに行ったわけ。こうやって目の前でしゃべったりしたんですよ、日比谷公園の喫茶店みたいなところで。そしたらしゃべっている時に、喉がつまったかなんかで、ちょっとつまったことがあった。そしたら彼は、「河上は、ここで言葉を詰まらせた」って。違う!(一同笑)

 :言葉じゃないんだ。本当は息が詰まってたんだ。

松永 :そうそうそう。なんかすごーく怪しい書き方して。そのことがあってから、彼としては宮崎の味方みたいな感じで、すごく距離を置いていた。それ以来ずっと接触がなくて、野田さんが『ESPIO』できっこがどうのこうとか言って、参考として私のサイトがひっかかって、その時は「やべぇ。頼むから目つけんといてくれ」と思った。そしたら、次の号で私のプロフィールがどうこう、出してる本がどうこうとか載せ始めてると。野田さんは本まで買ってやがる。ああ、終わった。もう目をつけられたなと。

 :それにしても、あれがあってから今までの熱狂ぶりというか、そこまで言わなくてもいいんじゃない?というのがあって、私も自分がターゲットになったのも初めてだったし、オウムを身近に感じたのも初めてだったわけですよ。
最初の感覚は、ただブロガーとして好奇心を持って参加するんならいいんじゃない?という風に思っていたのが、一連の流れを見ている中で、いやそうじゃなくて、私の認識があまくて、オウム自体がどうだというのは別のところで、社会の中では今でも大きな問題であって、それぞれみんなの中で解決できていないと感じるようになりました。今日も松永さんの話を聞くと、オウムのことを「鈍くさい」とおっしゃっているし、中はまったりするような感じがするわけですよ。でも、それってネット上で言われていることと、ものすごい温度差がありますよね。

松永 :そう。だからオウム・アーレフは危険であると。泉さんから事前に出してもらった質問の中に「オウムは危険なのか」という言葉があったけど、具体的に何を指して危険と言ってんですかと、そこはすごく疑問があって。

R30 :そうそう。

 :私は本当に一般人だと思うんですけど、11年前の頃から一連の流れをぼーっとしか見ていなくて、オウムというと私の中ではこわいというイメージがあるし、だから野田さんから送られてきたメールを見た時にものすごいショックだったわけですよ。「えー松永さんが!」とかたまってしまって、それですぐに返事ができなかったというのもあるし

佐々木 :それは、いつ頃メールが来たんですか。

 :「FLASH」の締め切りのすぐ前ですよね。

松永 :3月の3日くらい?

 :それくらいですかね。

佐々木 :それで頭が真っ白になってどこにも連絡しなかった?

 :来ましたということは松永さんに言いましたよ。でも、隠すのもおかしいし取材は受けますけど、別に期待されるようなことは何も話せないですしって

佐々木 :野田さんに対してね。

 :はい、メールで。締め切り前だってことは、最初のメールには書かれてなかったので、急いでいるはと思わなかったんですよね。私も動揺してるし、一晩考えようと思って、次の日寺澤さんから電話で「返事だけしといて」と言われて、寺澤さんから電話があったということは急いでいらっしゃるんだと思って、じゃあメールよりは電話をしようと電話を何回かしたんですが、出なかったんですよ。それでメールで「お会いしたいのはなぜですか?」と単純に好奇心で聞いたら、「会った方がいろいろ話が聞けるかなと思っただけのことですよ」ということで、私が聞いたことが気に入らなかったのもあったのかもしれない。別に取材拒否をしたわけではないんですけど。
野田さんからのメールに松永さんの写真が何枚か貼ってあったんですね。「それを見れば、一目見て河上イチローってわかるじゃないか」と別の人から言われたんですよ。

佐々木 :それはウェブの写真?

 :いや、野田さんからのメールの写真で。それは「FLASH」に載っていた写真と同じだったんですけど、あれが松永さんであるということはわかるけれども、写真の出所がわからないから河上イチローかどうかはわからないっていうことを。

松永 :だってそんな名前知らねーよって。

佐々木 :河上イチローって知らなかった?

 :知らなかったです。その時はじめて聞いたので。

松永 :だって河上イチローを知っているのは、2000年以前にウェブやってるアングラ系覗いてる人じゃないといないんですよ。

佐々木 :そうですよねぇ。

R30 :僕、1996年くらいから東芝事件で、2ちゃんねる、あめぞうを見てるけど、それでも知らなかったよ。

松永 :あーあー。そっか。東芝クレーマー事件関係で見てた?

R30 :そうそう、あの辺はもうずっと見てた。

松永 :じゃあ「ANSOC」とかあの辺の名前はわかる?アッキーの調停に回っていた人なんだけど。

R30 :あーはいはい、あの辺はわかります。

松永 :サイバッチが結構アッキーを追い詰めたとか。

R30 :それも覚えてる。

松永 :サイバッチの一番最初の記事は、私へのインタビュー。

R30 :そこまでは見てなかった。

松永 :それでもね、辿り着くかどうか

佐々木 :神話上の人物ですね(一同笑)

R30 :日本の黎明期の神話だよね。

佐々木 :そうそうそう。

松永 :だって2年前のサイトなんてみんな知らないよね、今ね。

 :一般的な人たちというのは、オウム=こわいのではというのがあって、何がこわいかというと、殺人とまでは行かなくても、集団的にまた何か事件を起こすんじゃないかという恐怖感が一般的にあるんじゃないかなと思うんですけど、

R30 :単純に破防法適用されかけて公安に目をつけられてるからというんでしょうね。

佐々木 :そりゃあまあ、一応危険な団体という認識は。でも、内向きの見え方と外向きの見方はやっぱり違って、松永さんは中にいると、みんなユルユルでだらしないみたいな

松永 :だらしないというか、社会に撃って出ようなんて気概もない

 :エリート集団だと思ってますからね。

佐々木 :僕なんか当時取材をしてて、上九に行ったりするとこわかったですね。得体の知れない人たちっていう。だから事件の前も含めて。南青山の新東京総本部でしたっけ?

松永 :はいはい。

佐々木 :あそこの高樹町のところへ行くとね、やっぱり写真撮られたりするんですよ。多分1対1でしゃべる経験が当時本当に数少なくて、そうすると不気味な人たちとマスコミという対立関係でしか会わないから、お互いに気持ち悪い、嫌な人たちという風にしか見えない。

R30、泉 :そうでしょうね。

佐々木 :多分今の世の中の人が見ているオウムというのは、そういう風にしか見えないわけで、昔エホバの証人輸血拒否事件というのが80年代にあって、あの時に輸血拒否で子供を殺して気持ち悪いひどい新興宗教だと言われてたんだけど、大泉実成というルポライターが、「説得」というノンフィィションを書いたんです。彼は元々子供の頃エホバの証人の信者で、事件が起きてから、昔はあんな教団じゃなかったのにと思って、もう1回エホバの証人へ信者として入ってみる。そうすると、全然昔と変わらず、やっぱり内側ではみんなすごくまったり仲良くしていて、ひっそりとしたちっちゃなコミュニティを作っている。このギャップは何なんだみたいなことが書いてあったのかな。今おっしゃったのは、それとすごく似てる感じがするんですよね。
コミュニティというのは、内向きと外向きで、全然見え方が違う。

松永 :違う。

R30 :ある種、世界観とかで繋がるとかそういう感覚?

松永 :うん。

R30 :っていうのが、日本人ってやっぱり本能的に拒否しちゃうんでしょうね。

松永 :集団というのが、地域集団とか会社はいいけど、思想的なことで集まるものに対してすごく拒否感がある。宗教も、なぜひとりでやらないんだみたいなものは必ず出てくる批判。

R30 :もちろん、その拒否感というか抵抗感みたいなものは、単に日本の社会の非常に保守的な側面だという言い方もできないことはないと思うんだけど、もう一つは、僕なりの理解でいくと、社会の経済原理とのすり合わせみたいなものはさ、多分そういうコミュニティは、この社会の中でほとんど解決しないままにいるんだよね。結局今のこの社会とは折り合わないからという理由で、彼らも社会の中に入ろうとするのも止めちゃうし、それを社会の側から見ると、「こいつ、本当に俺たちと縁切ろうと思ってるのか、気持ち悪いヤローだな」みたいな見え方をしちゃうという。多分ね、僕はその辺をどうにかしない限り、自分の頭の中にある世界観がどんなに素晴らしくても、他人に伝える仕組みというか、そういうものを社会の中で実践していくというのは、すごく難しいのかなという気がしていて。僕はたまたまそういう社会があるところに行って、一定期間したらもう止めるという、割り切りの中で出家したので。そりゃ向こうのコミュニティのルールに従ったというのもあるけど、割り切って行ったから、そういう意味では僕はすごいラッキーだったと思うんですけどね。やっぱり日本の中でしかその可能性を探せない人たちは、ある意味ではその壁に絶対どこかで突き当たらざるを得ない。
さっきの佐々木さんの質問の続きで、これからどうするのかというのも、経済性の部分に関しては、多分生きていくだけの収入は何とか維持できそうだみたいな話だと思うんですけど、もう一つ、自分の頭の中にある世界観というものと、今の日本の現実の社会との折り合いをどうつけていこうと思っていらっしゃるのかというのがもう一つ聞きたいことなんですけど、そこはどうなんですか。

松永 :例えば、家族というものに対してどうしても馴染めないっていうのかな。家族を一番の価値にする価値観だと何か馴染めないというのが、前からあって、その辺でどうしても話が合わない部分が出てくると思う。ただ、これから基本的にひとりで動いていくという場合は、世界観の違いはあんまりぶつからないんじゃないかな。例えば、誰かの葬式に出ないのかとか、そういうことではないし、それこそ輸血をしないとかそういう教義はないし、そういう意味ではぶつかりづらい部分であると思う。

 :恋愛関係とかどうなんですか。

松永 :その辺は、抜けたから戒律的には関係がないというか。出家の間はそれは完全に禁止だけれども。

 :家族と切り離すという考え方

松永 :それは、自分の中では自分の親は亡くなってしまったというのがあるから、どうでもいいと言えばどうでもいいんだけど、家族という単位を最高の価値観として持ってくるかどうかというとそうじゃないっていうのかな。他人同士が集まって、仲良く暮らしてますよというのはあると思うんだけど、家族というものをとにかく至上の価値観として、家族を最優先にしなさいみたいな、それは馴染まないという。それはある。

 :これからご自分で家族を作る気はないんですか。

松永 :そういう相手がいれば話は別だけどみたいな。

 :出てくるかもしれないですよね。

松永 :ただ、子供がいたとしても、私はあくまでも他人として接するだろうなというのはある。だから、自分が支配を及ぼすだとか、自分の所有物だとか、そういう発想は絶対持ちたくないというか。そういう風に思われるのが嫌だったというのがあるけど。

佐々木 :それは、親からそういう扱いを受けたってことですか。

松永 :多かれ少なかれそういう要素が出てきてしまうでしょう?例えば、逆らうと今まで養った分養育費返せとかね。それはそれで逆に冷めてるのかもしれないけど。或いは、「親の言うことが聞けんのか」簡単に言えばそういうセリフが出てくると。「あなたの言っていることが間違っているから、それはやっちゃいけないよ」だったら、単純に受け入れられる話だと思うけれども、「親の言うことを聞けないのか」という言い方はやっぱり親が子供に対して支配するという構造で、どうもそれは馴染めんのね。

佐々木 :要するに、天然な人間関係じゃなくて、もう1回リセットした上での新たな再契約みたいなのは当然アリなわけですよね。

松永 :そうです。だから親と子供であっても1対1の人間として同じ空間で、生計は自分が稼いで来てって、それは有り得ると思う。

佐々木 :その人間関係って、親子は別にして、人との人間関係をどういう風に築くべきだと思うんですか。ネット?

松永 :いや。

佐々木 :それは別に関係ない?

松永 :あんまり関係ない部分もある。私、結構リアルで会う人なんですよね。オフとかあったら行くし。そういうところで実際顔をつき合わせてというので行くのもあるし、全然ネットと関係ないところで作っていく関係も当然結構あるし。

⑤へ続く

<文責/泉 あい>

|

« 松永英明さんへインタビュー ③ | トップページ | 松永英明さんへインタビュー ⑤ »

コメント

>松永 :なんかオフ会の話でもね、2ちゃんねるの連中は来ないらしいから。
>泉 :アレ本気でやってくれればね。本気でオファー来るなら出ますよ。(一同笑)
>松永 :それくらい自分が全く相手から見えないところから石投げたいという人が多くて。
>一同 :うん。

参加拒否してた人はちゃんと事情を説明していたと思いますが、
ちゃんと読まれましたか?

オウムに対する認識が決定的に甘い人じゃない限り、
気楽に参加できない事ぐらい想像できませんか?

それと、松永氏がネット上で言動をもうちょっと調べてみてはどうですか?

投稿: センデロス | 2006年4月27日 (木) 00時29分

>R30 :極めて俗人的なところで、あの人ならやれたかも程度の?

断言はできませんが、文脈からすると「属人的」じゃないでしょうか。

投稿: (ぱ) | 2006年4月29日 (土) 23時33分

(ぱ)さん
ご本人に確認して間違いなら変更しておきます。
ご指摘ありがとうございます。

投稿: 泉 あい | 2006年4月30日 (日) 23時04分

この記事へのコメントは終了しました。

« 松永英明さんへインタビュー ③ | トップページ | 松永英明さんへインタビュー ⑤ »