|
|
きょうのコラム「時鐘」 2011年5月10日
嵐山光三郎さんの連載「ぶらり旅」で、究極の酒の肴(さかな)を教わった。小皿にご飯7粒を盛り、つまようじでつついて、しょうゆにつけて食べる
みそや塩をひとなめする流儀に加え、左党の友が一つ増えた。ただし、慣れ親しむしょうゆでないと、具合が悪かろう。土地が変わると、しょうゆも変わる。旅をすると、すぐに分かる。大概、口に合わずに閉口する。北陸人は恵まれている 会津の人から「三泣き」という言葉を聞いた。気位に満ち、他国の人には敷居の高い土地だという。だから、移り住んだ当初は、なじめずに一泣きする。ほどなく温かな人情に触れ、うれしさに二泣き。やがて土地を離れる時は、去りがたくてまた涙を流す 白虎隊を生んだ土地だから会津の情の深さには敬意を表する。が、北陸も「三泣き」のタネには事欠くまい。人情も、酒も肴も、しょうゆも自慢できる。慣れぬうちは戸惑っても、やがて魅せられる 外食産業花盛り。ありがたいが、全国均一のような味である。だから伝統のしょうゆの健闘には、土地の者も「泣かされる」。無論、幸せをかみしめるうれし泣きである。 |