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最終更新:2011年5月10日(火) 0時47分

「差し止め」元裁判長語る浜岡原発

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 全面停止が決まった浜岡原発。もしも事故が起これば30キロ圏内に住む、およそ75万人が影響を受けるかもしれません。これは、福島第一原発の30キロ圏内に住むおよそ14万人の5倍以上にのぼります。日本で初めての「原発運転の差し止め命令」を出した裁判長に聞きました。

 「ずいぶん(街が)近いという印象を受ける。原発から1キロ2キロ圏内で生活している人がたくさんいる」

 住宅地に寄り添うように立つ中部電力・浜岡原発。稼動を始めたのは35年前のことでした。

 「そのころは思慮が足りなかった。ちょっとずつ賢くなっていろいろ分かってきた。間違っていたのであればやり直さないと」(志賀原発差し止めを命じた井戸謙一元裁判長)

 こう語るのは、井戸謙一元裁判長。かつて、北陸電力・志賀原発について「住民に被ばくの危険がある」などとして、初めて運転差し止めを命じました。

【判決文】
 「可能性として、外部電源の喪失。非常用電源の喪失。様々な故障が同時に、多重防護が有効に機能するとは考えられない」

 その判決文には、福島の事故を予言するような言葉が並びます。

 「志賀原発を止めたが、浜岡原発の方が危ないと思っていた」(井戸謙一元裁判長)

 海岸のすぐ脇に見えるのは、今回停止が決まった浜岡原発の5号機です。

 「音もしないし 建物が建っているだけ。でも、あの中に猛毒があるんですよね・・・。(Q.浜岡原発の危険度は?)おそらく日本の原発で一番危険。中部電力としても、安政東海地震(1854年)のM8.5を想定して相当の耐震設計をしているが、それでも甘すぎると」(井戸謙一元裁判長)

 4年前、浜岡原発をめぐって耐震性を危ぶむ住民らが差し止めを求めましたが、静岡地裁は「運転に問題はない」と訴えを棄却。一方で、中部電力も補強工事を行うなど、耐震性を高める努力をしてきました。ところが・・・。

 「(5号機は)ものすごく揺れた。2年前の地震で」(井戸謙一元裁判長)

 2009年8月に起きた静岡沖地震。このとき、浜岡原/$G:G$b?7$7$$#59f5!$O%^%0%K%A%e!<%I#6!%#5$G!"#4#0#0%,%k0J>e$NMI$l$r5-O?!#$[$+$NO'$HHf$Y$F!"MI$l$O#2G\$+$i#3G\$"$C$?$H$$$$$^$9!#

 「震源断層の深さについて想定が甘すぎるとの指摘もされている。 本当はどうなのか分からない。中部電力の想定が正しいのかもしれない。しかし、警告を否定できない以上、運転は大変なリスクがあって、一つの大きな博打だと思う。もし博打に負けたら日本は取り返しがつかない壊滅的被害を受ける」(井戸謙一元裁判長)

 浜岡原発が着工された1971年当時、東海地震の可能性はほとんど指摘されてはいなかったといいます。その後、浮上した大規模地震の可能性。1、2号機は耐震工事のコストがかかりすぎるとして、すでに廃炉の手続きに入っています。

 今回の運転停止について政府は防波壁を造り、非常用電源を高台に設置しなおすなど、津波対策が終わるまでおよそ2年間と説明しています。

 「できるだけ早く実施、完了することを全勢力をあげてやっていきたい」(中部電力の会見、午後6時すぎ)

 9日の会見で、工事終了後、運転を再開する意向を示した中部電力。ですが、原子力発電について井戸元裁判長はこう指摘します。

 「人間は(原発を)制御できると思っていたが、制御できなくて今回のようなことが起こった。ここでもう一度再チャレンジするのか、立ち止まって一歩引くのか、分かれ道なんだろうと思う」(井戸謙一元裁判長)
(09日23:45)

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