「ウィキリークス」のジュリアン・アサンジュ代表は今年はじめ、英国東部で朝日新聞のインタビューに応じた。
――ウィキリークスの活動目的は。
「より公正で文明化された社会を作ることだ。政府が不正な計画を隠すのを難しくするしくみができれば、結果として政府はより公正な権力となる」
――なぜ新聞などの既成メディアと提携するのか。
「内部告発を寄せてくれた人々に、私たちはその公表が最大のインパクトをもたらすことを約束している。だが私たちの組織はまだ小さい。ほかの組織の知識や労働力などが要る」
「最初に提携した(欧米の)報道機関の関心は、めいめいの地域に限定されていた。欧米ならではの偏りもある。しかし米公電は全世界の問題を扱っている。だから、ほかの国々のメディアに提携を広げている」
――日本に関する米公電をどうみているのか。
「『日本発』の公電は、東アジアにおける米国の活動を知るための興味深い『窓』を提供するだろう。日本は比較的『閉じられた政府』をもってきた。最近、東アジアのことについて穏やかな主張をするようになったが、公電は日米関係の変化を物語るだろう」
――米政府文書の暴露は「米軍協力者らの人命を危険にさらす」といった批判を招いた。
「この4年間の私たちの活動によって、個人が一人として傷ついたことはない。米政府や国防総省でさえ、そうした例が一つもないことを認めている」
――「自分たちは攻撃されている」と強調しているが。
「昨年、米公電を初めて暴露したとき、私たちのサイトは何日間もハッカー攻撃を受けた。数千のコンピューターがこの攻撃に使われた。いまは、ほかのタイプの攻撃を受けている。米政府の圧力でクレジットカード会社が私たちとの取引を拒んだ。この経済的な攻撃はたいへん深刻だ」
――ウィキリークスと報道については。
「報道に関して、私たちの最も重要な貢献は、ジャーナリストや情報提供者から『恐れ』をとりのぞいたことだ。(内部告発の受け皿として)報道機関の前をいく『前衛』になることで実現した。米政府から攻撃されているのは私たちであり新聞社や記者ではない。これを不公平だとは思っていない。むしろ攻撃を吸収するのは私たちの役割だ」
――インターネットを通じた内部告発は今後、どうなっていくと思うか。
「情報提供が続けば、私たちの成功も続く。だが巨大な反撃に遭い、政治的に致命的なところまで追いつめられたら、それは多くの人々に失望をもたらし、報道の自由に対しても冷酷な締めつけとなるだろう」(聞き手・橋本聡、伊東和貴=ロンドン)