しかし、電力会社が算定する「料金原価」には主として(1)と(2)しか含まれていない。
そして、(3)は国家予算の一般会計ならびにエネルギー特別会計から支出され、(4)は料金原価にきわめて不十分にしか算入されていないというのが実情である(大島堅一『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社、2010年、55ページ)。
原子力発電よりもLNG火力発電の方が低コスト
しかも、上記のような原子力のコストが過小評価された手法で算出しても、原子力は液化天然ガス(LNG)火力や石炭火力よりも高コストとなっている(【表1】参照)。
また、上記の発電単価の算定では、「モデルプラント」を想定したうえで計算する方法が取られているが、この方法では実態との乖離が大きくなる可能性が生じる。
それに対し、相対的に実態に近い値を算定する方法として、『有価証券報告書総覧』を利用して実績値を推計する方法がある。大島氏はこの方法を用いて発電単価の推計値を算定しているが、その結果は以下の通りとなっている(【表2】参照)。
この結果によって、原子力が、火力だけでなく一般水力よりもコストが高くつく発電方法であることが明白に示されている。
なお揚水発電は、運転中に出力を一定に保たなければならない原子力発電の特性から、電力需要が低下する夜間に供給余剰分の電力を用いて揚水し、需要が増加する昼間に揚水した水を落下させて発電するという、一種の「生産調整弁」のようなものであり、原子力発電が存在しなければ不要となる発電方法である。
そのため、コスト計算の際には原子力単体を見るだけではなく「原子力+揚水」も見る必要がある。
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