被災地のために力になりたい、役に立ちたい。支援に携わる人の思いはみな同じはず。しかし、支援の現場は一枚岩になりきれていないのが実情だ。ニーズはある。支援の思いを無駄にしないためにも、各自が役立てる場所を見つける努力を続ける必要がある。
4月30日から5月4日の予定で大阪から友人2人と被災地に向かい、はまセンに滞在した関西大学に通う八木達祐氏(19)は、はまセンを選んだ理由を「集中しすぎてパンクしているボラセンじゃなくて、人が集まりにくいところに行くべきだと思っていたから」と話す。
ただ、こうした勝手ボラセンが立ち上がっている地区は、まだ恵まれていると言える。ニーズは見えないところに転がっている。例を探せば枚挙にいとまがない。
■見えないところに転がっているニーズ
宮城県東松島市のやや内陸側にある新興住宅地、牛坂地区は全壊を免れたものの、浸水による被害が大きい。この地区の避難所、鳴瀬子育て支援センターには、今でも30人ほどが寝泊まりをしており、周辺の自宅避難者100世帯の物資補給拠点にもなっている。
市から佐川急便のトラックで弁当が届いているが、暖かい炊き出しをしてくれるボランティアはめったに訪れない。自宅の掃除で泥だらけになった被災者が避難所に帰ってきても、汚れを落とすシャワーや風呂はない。常駐する市職員やボランティアもおらず、住民の自治で運営を続けている。その中心的な存在、伊藤信子さん(74)は言う。
「お風呂まで自衛隊が連れていってくれるけれど週に1回。とにかく足がないので不便をしている。この辺りは全然、報道もされず、注目されていない地域。たまにボランティアの方が来てくれると、涙が出るほどうれしい。来てくれるだけでうれしいんです」
いまだ、被災地の正確な情報が面で伝わらない「情報断絶」が続いている。被災地に根を下ろす災害ボラセンですら、末端の事情はつかみ切れておらず、震災直後から支援を続けるNPO・NGOのように被災地に直接入って足で情報をつかみ、解決していくボランティアが、まだまだ求められている。社協というフィルターは、万能ではない。
一般のボランティアであっても、ちょっとした仲間と資金、時間があれば、直接、避難所などの現場に出向いて役立てる場所は無数に残されている。ただし、直接の支援にはそれだけの責任が伴う。
■「ボランティアは無駄と承知でやるもの」
移動手段、食事、道具など、支援に必要なものを「自己完結」することは必須条件。はまセンは十分な信頼関係があって初めて、食事をともにしているわけで、いきなり他人の家へ踏み込んで「手伝ったから食事をください」などは言語道断だ。親切の押し売りも気をつけなければならない。避難所などへ物資を運んでも、すでに十分足りていると断られるケースもある。むりやり置くのは、迷惑になりかねない。湊小ボラセンの金田代表は心得をこう語る。
「まず、被災者に受け入れられることが大事。自分は何者か、何ができるのかをきちっと説明して、下手であってもささやかでも、寄り添いたいという気持ちを伝える。そして、自分は何がしたいではなく、その地の形に合わせて身を変え、求められていることをする。ボランティアは無駄と承知でやるもの。迷惑そうだったらすぐに撤退して、ほかをあたるべき」
もっとも、社協の災害ボラセンにボランティア希望者が集中するのはこれまでで、今後はニーズがボランティアの供給数を上回るかもしれない。連休中のボランティアツアーを企画した東京都社協の職員は「今はボランティア熱が高まっているが、連休が明けて潮が引くように熱が収まるのではないかと危惧している。被災地側からボランティアが足りているかのようなメッセージを発信してしまった影響も懸念している」と明かす。
このツアーは申し込み開始の直後に応募が殺到し、10分で締め切られた。しかし、次のまとまった休みは夏までない。企業のボランティア休暇制度はあまり普及しておらず、一転、各地の災害ボラセンから「ボランティア不足」のメッセージが出る可能性は高い。
重要なことは、1人でも多くの人が支援したいという思いを被災地で形にすること。そして、その思いを持続させていくこと。16年前の阪神大震災の時は、震災後1カ月で延べ60万人以上のボランティアが活躍したとされる。今回、4月末までに社協の災害ボラセンを通じて東北3県で活動したボランティアの数は延べ約19万人。震災の規模からして、あまりに少ない。自立・復興に向けて、さらなる支援の手が必要だということは自明だ。
(井上理)
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