当初は避難所内の支援で精一杯だったが、汚泥にまみれた自宅に帰る避難者が増えると、金田代表は小さなハンドマイクを持って「何かお困りのことはありませんか。高齢者の方はいませんか~!」と叫びながら、周囲の住宅地を練り歩いた。そうして収集したニーズを、ボラセンにやってくるボランティアに紹介し、出向いてもらった。
仕事内容は汚泥やガレキの撤去が大半を占めるが、避難所に同居しているため、物資の運搬や清掃、高齢者の見守りや子どもの遊び相手といった避難所内のニーズにも臨機応変に対応している。連休前までに1日平均で30~50人、延べ1000人以上のボランティアが活動した。そして連休に入り、稼働率を一気に高めた。
連休初日の29日から5月6日の期間だけで、1日平均約200人、延べ1600人以上のボランティアを受け入れた。この湊小ボラセンは、いわば「勝手ボラセン」。ボランティアの活動人数として報道で紹介される数字にも含まれない、知られざるボラセンと言える。
■一般ボランティアのほとんどが社協の災害ボラセンに集中
一般に災害ボラセンは、各市町村の社会福祉協議会(社協)がボランティア活動の受け皿として開設し、運営しているものを指す。もともと社協は、障害者や高齢者への福祉サービスを担う団体として各都道府県と市町村に設置されているが、近年はボランティア活動や市民活動の支援にも力を入れており、災害時の被災地支援にも取り組むようになった。震災後、岩手・宮城・福島の東北3県だけで65カ所にボラセンを開設、その地域でボランティア活動を希望する人に仕事を紹介する「マッチング」の役割を果たしている。冒頭の石巻専修大学にある災害ボラセンも、その1つだ。
一方、湊小ボラセンは社協とは関係のない独自運営。自らニーズを掘り起こし、ボランティアを受け入れ、解決している。連日訪れるボランティアは、「ネットや口コミで知った」という人がほとんど。やっていることは社協のボラセンと同じだが、活動範囲が小さいため行政や報道機関から注目されることはない。そうした勝手ボラセンが市内の全避難所に張り巡らされているわけでもない。
だから行政や報道機関は、各市町村に網羅されている社協のボラセンが発信する情報を拠りどころとし、ボランティアの「総本山」として扱う。「ボランティア=社協のボラセン」だと考える多くの一般ボランティアも、この社協のボラセンに集中する。ここに、混乱の一因がある。
社協側は、集中するボランティア希望者に対応するだけのリソースが不足している。ボラセンを運営するスタッフ自体も被災者であることが多く、現場の作業は連休が近づくにつれ、混乱を極めた。ボランティアが足りているのではなく、対応が難しいから「もう来ないで」となったわけだ。混乱の要因はもう1つある。「ニーズ不足」である。
■汚泥やガレキ撤去が主な仕事
被災地にはすでに、災害支援に長けたNPOやNGOなど数多くの専門的な団体が入り込んでおり、風呂の設営や炊き出し、避難者の心身のケアといった世話を続けている。避難所内は一般ボランティアが介入する余地は少なく、自宅避難者の巡回もスキルや移動手段の面で難しい。
となると、一般ボランティアが活躍できる場面は汚泥のかき出しやガレキの撤去といった限られた範囲となってしまう。後者は危険を伴うため、活動できる場所は絞られる。そこで、せっかくボランティアに来てもらっても全員にあてがうだけの仕事を準備できず、ストップをかけざるを得なくなった。
中でも石巻の災害ボラセンは比較的、恵まれていると言える。倒壊を免れたものの津波被害に遭った家屋や商店などが密集しているため、一般ボランティアが活躍しやすい汚泥のかき出しやガレキ撤去の需要は多い。
連休初日の29日からは、オリックスから1日あたり15人ほどボランティアとして派遣された同社社員をスタッフ要員として活用し、処理能力を高めた。ただ、ニーズが急激に増えたわけではなく、最後まで連休中の「受け入れ中止」を取り下げることができなかった。
■壊滅地域はさらにニーズが不足
同ボラセンのホームページには、こうある。「受付中止とさせていただいたのは、集まったボランティアを全て現場に派遣することが困難となったからです」「遠方からお出でいただいてもボランティア活動ができない状況が生じることから受付の中止といたしました」……。
結局は被災地ボランティアの供給がピークに達したこの連休でも、活動人数が激増、というわけにはいかなかった。すでに連休前から1日1200人以上をさばいていた石巻の災害ボラセンの活動人数は、連休初日の29日が1018人、30日が1466人、5月1日が1430人と推移した。
ニーズが多い石巻でもこうなのだから、ほかの地域は推して知るべしである。
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毎週月曜日から金曜日まで掲載している電子版オリジナルのコラム「ニュースこう読む」。日経新聞のベテラン編集委員や論説委員、有識者がニュースの「読み方」を解説している。筆者別で、今年1~4月累計で読者の閲覧件数が最も多かった記事を1本ずつ紹介する。…続き (5/2)
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