事件【産経抄】5月9日2011.5.9 03:43

  • [PR]

[事件]ニュース トピック:産経抄

  • メッセ
  • 印刷

【産経抄】
5月9日

2011.5.9 03:43

 京都市の京阪三条駅入り口に、地元の若者から、「土下座像」、あるいは「ごめんなさい像」などと呼ばれている像がある。待ち合わせ場所として人気が高く、「ドゲザ前で何時」で通じるそうだ。

 ▼確かに台座の上では、いかつい顔の武士がひれ伏している。とはいえモデルとなった江戸時代の勤皇思想家、高山彦九郎は、別に謝っているわけではない。三条大橋のたもとから、御所の荒廃を嘆きつつ、遥拝(ようはい)しているのだ。

 ▼もともと土下座は、貴人が通行する際に路上にひざまずいて平伏することを意味していた。謝罪の気持ちを表す姿に取って代わられたのは、いつのころからだろう。最近では、その気持ちさえも薄れ、単なるポーズにすぎないのではないか、と疑いたくなる土下座も珍しくない。

 ▼東京電力の清水正孝社長ら首脳陣や集団食中毒を引き起こした焼き肉チェーン店の社長の振る舞いを見て、その思いを強くする。原発事故の避難住民から「土下座しろ!」と迫られてからひれ伏すくらいなら、むしろまなじりを決して、事故の収拾と補償に万全を期する決意を語ってほしかった。

 ▼焼き肉チェーン店の社長の場合は、そもそもテレビカメラの向こうの誰に向かって、謝罪しているのかわからない。杜撰(ずさん)な生肉の取り扱いの実態が次々に明らかになり、被害者の怒りは増すばかりだ。

 ▼そんな土下座を見直す動きもある。大人向けコミック『どげせん』(板垣恵介&RIN作)は、一見さえない高校教師が、土下座によって、トラブルを解決していくストーリーだ。どぎつい笑いは万人にはお勧めできないが、真心のこもった土下座が、思いもかけない力を発揮する、というアイデアは面白い。

  • [PR]
  • [PR]

[PR] お役立ち情報

PR
PR

編集部リコメンド

このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。
© 2011 The Sankei Shimbun & Sankei Digital