きょうのコラム「時鐘」 2011年5月9日

 働き蜂と同じ条件で生まれるのに、ロイヤルゼリーを食べたものだけが女王蜂になる。体格から寿命まで大違い。ミツバチの生態は不思議だ

今風に言えば、同じDNAを持ちながら、食べ物と環境がちがうと、まるで別の「生」を得ることになる。先月、富山県立大の鎌倉講師がその秘密の一端を明らかにして話題になっている

100歳を超えてなお元気な「女王蜂」のような人がいる一方で、生きたいと願う命が若くして絶たれる人生もある。生まれる前から源が違うのならあきらめもする。が、同じだと聞けば「自分も何とか」と欲が出る

若葉がまぶしく命が芽吹く季節に、たくさんの生と死を目の当たりにした。先ごろは京都の114歳男性が男で世界一の長寿者になった。DNAの違いなのか。食べ物や暮らしぶりなど環境の違いなのか。日本人の男として生まれ明治・大正・昭和・平成を生き抜いて、ついに世界一である

災害は人を運命論者にするともいう。100歳までとは言わない。今しばらくは元気に仕事をして、税金を納め続け、ささやかな被災地支援にしたいと「働き蜂」は考えている。