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学ぶ・育てる:教えて!デスク なぜ日本に原発が多いの

 東日本大(だい)震(しん)災(さい)による福(ふく)島(しま)県(けん)の福(ふく)島(しま)第(だい)1原(げん)子(し)力(りょく)発(はつ)電(でん)所(しょ)の事(じ)故(こ)で、放(ほう)射(しゃ)性(せい)物(ぶっ)質(しつ)が大(たい)量(りょう)に漏(も)れ出て住(じゅう)民(みん)が避(ひ)難(なん)したり農(のう)業(ぎょう)や漁(ぎょ)業(ぎょう)に大きな悪(あく)影(えい)響(きょう)が出ました。日本には今、原発が54基(き)もあります。なぜでしょう。

 ◆地元の反対がありましたが、 「資源が少ない国だから」と 政府が建設を進めてきました。

 ◇世界で3番目に多く、年間発電量の3割も

 原子力発(はつ)電(でん)(原発)は、原子炉(ろ)というかまの中でウランという燃(ねん)料(りょう)を燃(も)やし、水をわかして高(こう)温(おん)の蒸(じょう)気(き)を作り、その力で発電機(き)を回して大(たい)量(りょう)の電気を起(お)こします。ウランは大きなエネルギーを出せるうえ、石(せき)油(ゆ)が少ない国からも採(と)れます。

 このため政府(せいふ)は「日本には資源(しげん)が少ないが、原発ならば技(ぎ)術(じゅつ)力(りょく)を生かして安(あん)定(てい)したエネルギーを生み出せる」と考えたのです。1966年に最(さい)初(しょ)の原発を動(うご)かして以(い)来(らい)、「オイルショック」と呼(よ)ばれる石油が不(ふ)足(そく)する事(じ)件(けん)もあって、次(つぎ)々(つぎ)と原発を建(けん)設(せつ)する政(せい)策(さく)をとってきました。

 日本の原発の数はアメリカとフランスに次(つ)いで世(せ)界(かい)で3番目に多く、最(さい)近(きん)は1年間の発電量(りょう)の約(やく)3割(わり)を原発が占(し)めています。

 ◇事故が多く、地震学者の警告も

 政府はもっとたくさんの原発を建設しようと考えましたが、事(じ)故(こ)が起(お)きたときの放(ほう)射(しゃ)能(のう)漏(も)れを心(しん)配(ぱい)した地元の強い反対(はんたい)運(うん)動(どう)も起き、思ったほど進(すす)みませんでした。

 実(じっ)際(さい)に大きな事故もありました。アメリカでは1979年のスリーマイル島(とう)原発事故で原子炉の燃料が溶(と)け出しました。1986年には旧(きゅう)ソ連(れん)のチェルノブイリ原発事故で原子炉が爆(ばく)発(はつ)し、放射性(せい)物(ぶっ)質(しつ)がヨーロッパを広く汚(お)染(せん)し、ドイツをはじめ欧(おう)米(べい)で脱(だつ)原発の動(うご)きが広がりました。10年以(い)上(じょう)前からは、大きな地(じ)震(しん)が起きると、地震の被(ひ)害(がい)と原発事故が同時に起きて深(しん)刻(こく)なことになる「原発震(しん)災(さい)」を警告(けいこく)した地震学者(がくしゃ)がいました。

 こうしたことがあって、日本でも原発建設計画が次(つぎ)々(つぎ)に中止や中(ちゅう)断(だん)になりました。高(こう)知(ち)県(けん)窪(くぼ)川(かわ)町(ちょう)(現(げん)四万十町(しまんとちょう))、和(わ)歌(か)山(やま)県(けん)日高町と日(ひ)置(き)川(がわ)町(ちょう)(現白(しら)浜(はま)町(ちょう))、新(にい)潟(がた)県(けん)巻(まき)町(まち)(現新(にい)潟(がた)市(し))、石(いし)川(かわ)県(けん)珠(す)洲(ず)市(し)、三(み)重(え)県(けん)の芦(あし)浜(はま)(南伊(い)勢(せ)町(ちょう)、大(たい)紀(き)町(ちょう))などです。

 福島第1原発のすぐ北側(がわ)にも浪(なみ)江(え)・小高(おだか)原発(浪(なみ)江(え)町(まち)、南相(そう)馬(ま)市(し))の計画が40年以上前からありますが、地元の強い抵(てい)抗(こう)で計画は進んでいません。

 ◇電気をたくさん使う生活、見直して

 各地(かくち)の反対でなかなか原発の建設が進まない中、世(せ)界(かい)的(てき)に地(ち)球(きゅう)温(おん)暖(だん)化(か)対(たい)策(さく)が問(もん)題(だい)になると建設の追(お)い風(かぜ)となりました。原発は温暖化の原(げん)因(いん)となる二(に)酸(さん)化(か)炭(たん)素(そ)を出す量(りょう)が少ないと考えられたからです。政府は昨(さく)年(ねん)、20年後には14基(き)以上の原発を新しく建設するという計画を立て、巻(ま)き返(かえ)そうとしていました。

 そこに福島原発事故が起きました。ふだんは見えにくかった原発の危険(きけん)な部(ぶ)分(ぶん)が表(おもて)に出てしまったのです。政府は計画を見直さなければならなくなりました。

 私(わたし)たちもまた、今までのやり方を見直さなくてはいけません。電気をたくさん使(つか)う生活や夜中まで明るい都(と)市(し)の暮(く)らし、都(と)会(かい)の電気をまかなうために遠い場(ば)所(しょ)に発電所(しょ)を作るようなやり方がいいのでしょうか。一(いっ)緒(しょ)に考えていきましょう。

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 ■答える人 大島秀利(おおしま・ひでとし)

毎日新聞大(おお)阪(さか)本社編(へん)集(しゅう)委(い)員(いん)。入社26年目。原(げん)発(ぱつ)をめぐって住(じゅう)民(みん)、電力会社、学(がく)者(しゃ)らを取(しゅ)材(ざい)してきました。発(はつ)がん物(ぶっ)質(しつ)のアスベストによる被(ひ)害(がい)にも詳(くわ)しい。埼(さい)玉(たま)県(けん)出(しゅっ)身(しん)。

毎日新聞 2011年5月7日 東京朝刊

 

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