2011年3月18日 11時18分 更新:3月18日 12時28分
日米欧が10年半ぶりの協調介入に踏み切った背景には、未曽有の震災で苦境に陥る日本が円高でさらに打撃を受ければ、世界経済も悪影響を免れないとの強い危機感がある。特に、震災に乗じた投機的な円買いの動きが金融市場を混乱させることが懸念されており、各国の利害を超えた協調に踏み切った。
日米欧各国は、リーマン・ショック後の世界的な景気後退の中で、輸出主導の回復を図る戦略に傾斜。G7や主要20カ国・地域(G20)会合で「国際協調」をうたいながら、実態は自国通貨の安値誘導や、他国の金融政策に対する批判の応酬が続いていた。日本政府・日銀が昨年9月に大規模介入に踏み切った際も、米欧の協調は得られず、逆に各国議会などから「不当な国内産業優遇政策だ」との批判を招いていた。
しかし今回は、震災による壊滅的な被害や、原発トラブルが世界に報じられ、各国は日本経済への懸念を一気に強めた。日本経済が深刻な打撃を受ければ、回復途上にある世界経済にも悪影響が波及しかねない。「友人である日本を支援する必要がある」(フランスのラガルド財務相)との各国の同情的な世論も、利害を超えた協調を後押しした。
さらに、今回の円高局面では、「日本の生損保が保険金払いのため海外資産を売却する」との根拠の定かではない思惑が市場に拡大。これに乗じたヘッジファンドなどが取引の少ない早朝に円買い・ドル売りを仕掛けるなど、震災に乗じた投機的な取引も目立った。このためリーマン・ショックを生む一因となったファンドの無秩序な動きの封じ込めに、当局が強い姿勢を示す狙いもあった。
協調介入は市場でも「予想外で驚いた。G7の強い意志の表れであり、それだけ強い危機感があったのだろう」(大和総研の亀岡裕次・チーフ為替ストラテジスト)と驚きをもって迎えられた。だが、東京外国為替市場の円相場は、対ドルで前日午後5時比2円超安い1ドル=81円台半ばと震災前の水準まで戻したところでとどまっている。市場は欧米の協調の「本気度」を探っているとみられ、円高局面を反転できるかは予断を許さない状況だ。【坂井隆之】