2011年3月17日 19時28分 更新:3月18日 0時37分
東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールを冷却するため、防衛省は17日午後7時35分から、陸・海・空自衛隊が高圧消防車5台で地上から放水を行った。同日午前には、陸上自衛隊の大型輸送ヘリコプターで上空から海水を投下した。警視庁も同夜、機動隊の高圧放水車で地上から放水したが、現場の放射線量が高いため作業を中断した。上空と地上からの大規模な冷却作業がようやく本格化したが、放射線の壁にはばまれ作業は難航が予想される。【本多健、念佛明奈、須田桃子、鮎川耕史】
防衛省は18日も同様に上空と地上からの作業を準備しているが、警視庁は作業を打ち切る方針で、17日夜のうちに現地を撤収した。
自衛隊による地上からの放水は、1分間に6トンを放水できる大型破壊機救難消防車(A-MB-3)2台を含めた高圧消防車計5台が、数分間から10分間おきに1台ずつ順次放水する方法で行われた。放水量は計30トン。自衛隊員計約30人が作業にあたった。3号機の建屋内に水が届いたことを隊員が目視で確認し、最初の放水から約30分後の午後8時9分に作業を終了した。「放水が使用済み核燃料プールに届いているかはわからない」(統幕幹部)としている。
自衛隊の当初の計画では、大型破壊機救難消防車に対して小型の消防車9台を3台ずつホースで連結し、海水を吸い上げて送り込む作業を想定していた。しかし折木良一統合幕僚長は17日夕の記者会見で「現地の数値(放射線量)が高く、車両の外で行動するのは厳しい」と述べ、外気に触れるホース連結作業を見送らざるを得ない現状を説明。5台で放水量計30トンに規模を縮小する方針に転換した。
一方、ヘリからの作業に従事した19人の放射線量を検査したところ、全員が1ミリシーベルト以下だったという。
警視庁の放水作業は、3人の機動隊員で午後7時ごろに開始。3号機から約50メートルの距離まで接近した高圧放水車で放水したが、開始から約5分後に放射線量を計測する機器のアラームが鳴り、作業を打ち切った。放水は3号機に届いたが、核燃料プールまで達したかは不明だという。放水作業は他に7人の要員がいたが、交代して作業を続けることは危険と判断した。機動隊員の健康状態に問題は出ていないという。経済産業省の要請を受けた警察庁が16日、警視庁に出動を指示した。
奈良林直(ただし)・北海道大教授(原子炉工学)は、3号機の冷却作業について「燃料集合体1体の発熱量は、家庭用ストーブ4台分ほどで、プール全体の514体分なら1日約100トンの水を掛け続ければ打ち消せる。プールに残った水が蒸発したり、上から放水するだけでも、一定の冷却効果が期待できる」と指摘する。
一方、東京電力は17日、東日本大震災で失った福島第1原発の外部電源が18日にも一部回復する見通しになったことを明らかにした。実現すれば、11日の地震発生後、初めて安定した電力が確保される。原子炉や使用済み核燃料プールの冷却機能が復活し、放射性物質の放出につながる燃料棒の損傷悪化の回避が期待される。電力は、東北電力の高圧送電線から2号機の配電盤に接続する形で得られる。