2011年3月17日 10時36分 更新:3月17日 10時41分
東日本大震災から7日目。原発事故で放射性物質が拡散した福島県では屋内退避指示区域が30キロに広がったことで、物流を断たれた被災住民らが苦しんでいる。区域外でさえ、県が食料や医薬品など支援物資を手配したところ、放射能汚染に不安を持った業者に「途中までなら荷を運ぶ」と配送を断られた。区域内の葬儀場では火葬用の灯油の確保がままならず、遺族が長い順番待ちをしている。遺族は「火葬は1週間以上先と言われた。ドライアイスも不足し、長い時間安置しておけない」と困惑している。
南相馬市の「原町斎場」の火葬場は市中心部にあり、原発から20~30キロ圏で屋内退避指示区域にある。14日に業務を再開したが、指示区域になった15日に停止。灯油が底をつきそうで、市内の燃料業者に発注したが多くは「そこは屋内退避区域だから行けない」と拒まれたという。
ようやく地元ガス会社から1万リットルを調達したが、被災住民で膨れあがる避難所の暖房に回した。一方、早く火葬してほしいと求める遺族が多く、急きょ約40人分の灯油を業者から調達し、17日に業務を再開した。
多くの犠牲者が出たうえ、地震後はほとんど業務していないため、現在150人以上の予約が入っている。火葬には最低40リットルが必要で、足りない分は休業中の市内のガソリンスタンドの許可を得たうえで地下タンクから集めるという。
叔母の五賀文子さん(75)を震災で亡くした同市原町区萱浜(かいばま)の会社員、村田年秀さん(50)は16日、葬儀業者の言葉に驚いた。「火葬は灯油が補給される23日以降になる。ただ、燃料が来る確証はない」。遺体は葬儀業者に預けたままだ。村田さんは「市役所に早く火葬したいと言ったら、(車で1時間かかる)川俣町の火葬場に自分で運んでほしいと言われた」という。だがガソリンも乏しく、自分の娘(25)と義父、別の叔父、叔母の4人の行方も分からない。「捜索するためのガソリンが底をつきそう」と涙ながらに話した。
一方、県は区域外への物資輸送を断られた場合、県中央部の郡山市に借りた倉庫で荷を降ろさせ、別の運送業者を手配して目的地まで配送している。
県農水部は「『福島県』というだけで業者が敬遠する」と話す。県幹部は「避難指示、屋内退避指示の区域があたかも県内広く設定されていると誤解している業者がいる。現状を正確に理解してほしい」と話した。【神保圭作、種市房子】