2011年3月17日 10時14分 更新:3月17日 10時48分
東京電力福島第1原発事故の深刻化が、外国為替市場の円買い・ドル売りを加速させている。16日のニューヨーク市場で、日本企業が手持ちの円資金を増やすため、ドル建て資産を売るのではとの見方から、円相場は95年4月19日につけた戦後最高値(1ドル=79円75銭)を約16年ぶりに突破。17日のシドニー市場では一時1ドル=76円25銭まで急騰した。同日の東京市場では、財務省による為替介入への警戒感からドルがやや買い戻されたものの、1ドル=78円台後半から79円台前半と、同市場での最高値を上回る水準で推移している。
急激な円高の進行は、輸出企業の業績悪化を引き起こしかねず、回復途上の日本経済に打撃を与える恐れもある。
16日午後、米政府が、原発の半径80キロ圏内に滞在する米国民に避難勧告を出したことをきっかけに、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が急落。金融市場全体でリスクを回避するムードが一気に強まった。投資家の間では、これまで保有してきた株式や商品などリスクの高い資産を売り、安全とされる債券に換える動きが加速。米国債のほか、日本国債も買われるとの思惑が広がり、円買いにつながった。また、東日本大震災の被害などを受けた日本企業の手元資金確保のほか、被災地への巨額の損害保険金支払いのため、保険会社が円資金を調達するのでは、との観測も円を高騰させた。
一方、17日の東京市場では、早朝の海外市場に比べ2円程度円安に振れ、1ドル=78円台後半で取引を始めた。市場では「原発事故への懸念が一掃されない限り、円買い圧力が続くのは必至」(邦銀)との見方もあり、1ドル=80円を突破した円高水準の長期化も見込まれている。同時に急激な円高を受け政府・日銀による円売り介入への警戒感も強まっており、「円高がさらに進んでいく可能性は低い」(大手海外証券)との観測もある。【大久保渉、ワシントン斉藤信宏】