2011年3月16日 18時34分 更新:3月16日 19時19分
ガソリン不足が深刻化している東日本大震災の被災地で、自転車が売れている。通勤に使う人が多いが、中には50キロ先へ行方不明の妻子を捜しにいくという人も。品薄状態が続き、古い自転車を修理に持ち込む人も増えている。
福島市万世町の自転車店では、ガソリンスタンドで在庫切れが続出した13日に100台が売り切れた。同市内に15店舗あるホームセンター「ダイユーエイト」も普段の4倍近く売れている。
同市宮下町の「橋本輪業商会」では、在庫40台が15日に売り切れた。入荷の見込みもない。パンクして使っていなかった自転車の修理に訪れる客も絶えず、経営者の橋本貞良さん(78)は「60年営業していてこんな売れ行きは初めて。『通勤に要るのでどれでもいい』と頼まれる。被災者の心労を考えると売れても喜べない」と話した。
仙台市青葉区の「シクロヤマグチ」。11日の震災発生から2日間で計約30台が売れた。13日ごろからは、長距離を走れるスポーツタイプを買う人が増えた。16日に購入した30代男性は「連絡が取れない妻と11カ月の子供を捜しに行く」と話し、約50キロ離れた宮城県石巻市に向かったという。店主の山口哲男さん(61)も家が壊れ、住める状態ではない。「役に立ちたい一心で営業を続けている」と話した。
盛岡市上田の「佐々宗(ささそう)輪店上田店」では14日から2日間で約500台が売れた。通勤に必要という人が多いという。16日午後で100台の在庫があるが、売り切れるのは時間の問題だという。【長田舞子】