経済

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静岡・浜岡原発:停止要請 結論持ち越し 中部電、リスクに苦悩

 ◇供給不安/株主訴訟/赤字転落

 菅直人首相による運転中の4、5号機を含む浜岡原発の全面停止要請について、中部電力が7日、受け入れ判断を見送ったのは、停止に伴うリスクへの対応を決めかねたからだ。夏場の電力供給不安に加え、火力発電への切り替えによる燃料費上昇で業績悪化が避けられそうになく、経営陣には「株主代表訴訟リスク」(アナリスト)もある。「首相の要請は拒否できない」(幹部)とはいえ、水野明久社長らの苦悩は深い。【丸山進】

 中部電は同日の臨時取締役会後、「検討内容が極めて重要、多岐にわたり、(顧客や株主、立地地域など)多くの関係者に多大な影響を与えるため、継続審議とした」との趣旨のコメントを発表した。幹部によると、会議は(1)夏場の供給力確保と燃料調達(2)業績への影響と株主への説明(3)立地地域への対応--が焦点となった。

 中部電の11年度の供給力は2999万キロワット。浜岡原発分(360万キロワット)を除いても想定する夏場のピーク需要(2560万キロワット)にギリギリ対応できる計算だが、猛暑になれば電力不足に陥りかねない。

 不安解消には、原発停止分の穴埋めが必要だが、古い火力発電所の再稼働には時間がかかる上、燃料の液化天然ガス(LNG)や重油を確保する必要がある。関係者によると、中部電はすでに原発停止を前提にカタールなどからのLNGの追加調達を探り始めているが、確保のメドはまだ立っていない。

 火力発電増強に伴い年間約2500億円の追加コストも見込まれる。同社は浜岡原発の運転を前提に12年3月期の営業利益を1300億円と予想してきたが、原発停止に伴う燃料費上昇で赤字転落の可能性が高い。

 今回の菅首相の原発停止要請に明確な法的権限が無いことも事情を複雑にしている。「首相の要請」との理由だけで業績悪化などへの株主の理解が得られるかどうか。経営陣は説明責任に苦慮している。さらに、浜岡原発停止で毎年の国からの交付金が無くなる静岡県御前崎市などの意見や、地域雇用への配慮も求められており、中部電は厳しい立場に追い込まれている。

毎日新聞 2011年5月8日 東京朝刊

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