自身のパスミスから清水に同点を許し、試合後がっくりと引き揚げる名古屋のGK楢崎=瑞穂陸上競技場で(隈崎稔樹撮影)
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◆名古屋1−1清水
引き分けが決まった瞬間、GK楢崎は両腕を腰に当てて立ち尽くした。J1史上3人目の通算450試合出場も素直に喜べない。DF増川が肩をたたくが、自らのミスで失点を招いた守護神は、着替えを済ませて30分以上たっても、放心状態から抜け出せないでいた。
「何も分からない」と首を振った後「あんな凡人以下のことをしてしまって」と声を絞り出した。
前半18分、田中隼の苦し紛れのバックパスを楢崎が蹴り損ねて、相手に渡り、同点ゴールを許した。ホームで勝ち点3を失ったのは、攻めきれなかったことも大きな要因だったが、「何年かぶりに…。ミスは起きるものだけど、1番後ろでやれば失点につながる」と楢崎はすべてを背負い込んだ。
痛恨の引き分けにもストイコビッチ監督は「引き分けは妥当。得点できなければ代償を払う。相手のシュートがポストに当たって救われたところもあった」と、悲観的には受け止めていなかった。闘莉王、ケネディ、金崎の負傷離脱に加え、連戦の疲労。勝つために切るカードも限られたなかで、苦戦は覚悟していた。
闘莉王の不在は、特に攻撃面で大きな打撃となった。DFラインは清水の攻撃に難なく対応するものの、ボールを持った時に不安定。前に運べず、バックパスが増えて、信じられないミスの伏線になった。それでもストイコビッチ監督は「いない選手のことを嘆いたりしない。これがベストチームだ」と声を荒らげ「ハードに戦ったことには満足している」とマイナス材料には触れない。来週以降は闘莉王、ダニルソンが戻ってくる。1番苦しい状況で、確保した勝ち点1に、納得する度量を見せた。 (木本邦彦)
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