成人合宿ができるまで 〜開発者インタビュー〜

なぜ、今の時代に「成人合宿」が必要なのか?

「成人合宿」プログラムを開発したNPO「ホワイトハンズ」(代表・坂爪真吾)へのインタビュー

坂爪 真吾 (さかつめ しんご)

1981年新潟市生まれ。東京大学文学部卒業

NPOホワイトハンズ代表

2011年より、新潟大学医学部保健学科非常勤講師

趣味は、奥さんとの山登り&陸生有尾類の飼育



----まず、「成人合宿」プログラムができるまでのいきさつを、教えて頂けますでしょうか。


 NPOホワイトハンズは、「新しい性の公共をつくる」という理念の下、全ての人が、生涯にわたって、

 自己の性に関する尊厳と自立を守るために必要な、公益性の高いサービス、プログラムを開発・提供するNPOです。


 2008年の創業より、「障害者の性に関する尊厳と自立を守る」というテーマで、自力での射精行為が困難な

 脳性まひの重度身体障害者に対する性機能ケアを、全国各地で提供しております。


 これに引き続き、2011年からは、「性の専門職を育成する」というテーマで、

 臨床性護士の養成講座=「ホワイトハンズ・プログラム」を開始いたしました。


 臨床性護士とは、簡単に言いますと、「性に関する問題を解決するプロフェッショナル」です。

 性に関する専門知識や技術を武器にして、個人や組織、社会の性に関する問題を解決するための

 「臨床性護プログラム」を開発・実施することが仕事です。


 「臨床性護プログラム」の例としましては、性に関する講座・勉強会の開催、地域の性犯罪予防プログラムの開発、

 セックスカウンセリング、高齢者・障害者への「性の介護」サービスの開発、性に関する統計調査、

 商品開発のコンサルティングなどが挙げられます。


 今回の「成人合宿」プログラムは、この臨床性護プログラムの一環として、

 NPOホワイトハンズが開発し、実施するものです。


----なるほど。それでは、なぜ「大学生の性生活のスタートアップ」に、焦点を当てたのですか?


 かつての村落共同体に存在した「大人になるための通過儀礼としての初交体験」を、

 21世紀の現代に見合った(=個人の尊厳・人権に配慮した)、科学的かつ社会性のある

 「性生活スタートアップ・プログラム」として再構築することができれば、現代社会に存在する

 多くの性問題が解決できるのでは、と考えたからです。


----「多くの性問題」とは、どのような問題なのでしょうか?


 性に関する知識・情報・経験の不足によって生じる、男女間の問題です。

 具体的には、性に対する不安やコンプレックス、恋人や配偶者間のセックスレスやDV問題、

 性的虐待や性暴力、性感染症、避妊や不妊の問題などです。


 【初めての方へ】のページでも述べておりますが、「成人合宿」は、分かりやすく言えば、

 性生活をはじめるための「ライセンス」、自動車学校的な位置づけのプログラムです。


 残念ながら、若者が健全な性生活の送り方について教育を受ける機会は、

 現代社会においては、全く存在しません。

 メディアやインターネット経由のに接しても、性に対する不安感や嫌悪感、

 誤った知識や偏見が増幅されるだけ。


 さらに、統計的に見ると、日本の若者は、世間的なイメージに反して、「性的に極めて不活発」です。

 これが、晩婚化・少子化、ひいては無縁社会の遠因になっている、と考えられます。


----確かに、若者の性生活の開始を支援する機会や制度は、皆無に等しいですね。


 性生活を開始できるかどうか、性生活のパートナーを見つけられるかどうかは、

 全て「個人の問題」「自己責任」「個人のコミュニケーション・スキルの問題」と見なされ、

 各人の自助努力や運に任されている、というのが現状です。


 地域社会や体育会系のネットワークが存在した昔は、誰かが「初体験のきっかけ作り」の世話を焼いてくれました。

 頼まれもしないのに、縁談を持ってくる近所のおばさん。社員同士の職場結婚を、さりげなく斡旋する上司。

 無理矢理、後輩を性風俗に連れ込む、運動部の先輩。

 倫理的な面での是非はともかくとして、今は、そうした仕組みやコミュニティが、存在していません。


----現代の若者は、性生活を自然に開始することが、昔に比べて困難になっている、ということでしょうか。


 その通りだと思います。

 「処女であることは恥ずかしい」という同調圧力を苦にして、処女を捨てるためだけに援助交際に走る女子。

 「童貞であることは恥ずかしい」という周囲のまなざしやメディアの煽りに負けて、

 怪しい出会い系サイトや性風俗店に行ったものの、満足にセックスを成功させることができずに

 大きな精神的ダメージを負ったり、法外な金額をボッタクラれたり、性病になったりする男子。


 初体験の成否や質・内容が、セックスに対するイメージを決定づけ、本人のその後の性生活の質を左右します。

 援助交際で初体験をした女子、性風俗店で初体験をした男子が、その後、セックスや性生活、

 子どもを産み育てることに対して、どのようなイメージを持つことになるのか、考えてみてください。


----そう考えると、非常に深刻な問題ですね。


 現状では、「安全かつ健全な形で性生活を開始すること」のハードルは、不必要なまでに高くなっています。

 特に女子の場合、相手の男子に知識が無いと、初体験からいきなりレイプやDVまがいの目に遭ってしまい、

 以降の性生活に、長期間(場合によっては一生)、大きな影を落とすこともあります。


 少子化の進む現在、「若者が、安全かつ健全な形で、性生活を開始するために必要な機会を得られるかどうか」は、

 もはや「個人の問題」として無視することはできないでしょう。言い換えれば、「社会の問題」です。


----そうした問題意識が、「成人合宿」プログラムを考案した背景にあったのですね。


 そうです。一定のカリキュラムにしたがって真面目に学習・行動すれば、誰にでも、

 自尊感情及び他尊感情を損なわないような形で、性生活を安全に開始できる機会が得られるような場を、

 社会性のある形で、提供する必要がある。


 安全かつ健全な形で、性生活をスタートさせることは、本人の自尊感情にとって、大きなプラスになります。

 この自信が、以後、彼や彼女が恋愛や結婚に踏み出していくための、大きなバックボーンになるはず。

 セックスに対するイメージを、肯定的かつ健全なものとして学ぶことが、大切なのです。


----異性との交際、異性との性生活に対して、自信と勇気がつく、というわけですね。


 「18歳になれば、容姿やコミュニケーション・スキルの有無、住んでいる地域や出会いの機会に関わらず、

 誰でも、安全に異性との交際と性生活を体験できる」仕組みがあれば、

 「自分は一生、異性と交際したり、セックスしたりできないんじゃないか」と、悶々と悩んでいる

 思春期の中高生の数を、劇的に減らすことができると思いませんか?


 少なくとも、自分が中高生だったら、「な〜んだ、18歳になったら、成人合宿に行けばいいじゃん!」と、

 物凄く安心しますね(笑)。


 これまで、個人の努力や運、自己責任、自由恋愛市場に任せられてきた「性生活の開始」を、

 「いつでも・どこでも・誰にでも」開始できるように仕組み化することができれば、

 少子化の防止、無縁社会へのカウンターにもつながるはず、と考えます。


 もちろん、このプログラムを普及させていくには長い時間がかかると思いますが、

 一人でも多くの若者の役にたてるよう、開発者として努力していきたいですね。

 (了)



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