イラク戦争報道などで活躍したNHKワシントン支局の手嶋龍一支局長(55)が6日発令の人事で更迭されることが3日、分かった。手嶋氏は近く退職するという。ソフトな語り口で、視聴者の評価も高かった同局の顔ともいる名物支局長の周辺で、一体、何があったのか。
関係者によると、手嶋氏は現職が約8年と長いことから、NHKは東京・渋谷の放送センターに戻すことを検討した。
「局側は、手嶋氏が海老沢勝二前会長(74)の信頼が厚かったことなどから、解説委員など“日の当たる”ポストでは処遇できないと判断したのか、手島氏に対し、内々に要職とはいえないポストを伝えたようだ。手島氏は、この人事が不服だったのか、退職を決めたようです」(関係者)
ただ、局側は、手嶋氏が東京の本部に戻った後に辞める場合、事務手続きが煩雑となるため、6日発令の人事では支局長の任を解き、“ヒラの支局員”にする形を取るとみられる。
手嶋氏は、政治部で首相官邸や自民党などを担当。ドイツのボン特派員なども務め、海外取材の経験も豊富で、イラク戦争では画面に連日にわたって、終日登場。やわらかい口調で、的確に事実を伝える姿が視聴者の人気を集めた。
関係者の間では「画面から受ける穏やかな印象より実際はエネルギッシュなタフマン」との評判で、局の看板番組「ニュース10」のメーンキャスター候補に上ったこともあった。
一方で、「海老沢氏に近い立場を利用し、報道局の人事に口出しをするなどしたとされ、内部でひんしゅくを買っていたようだ」との声もある。
NHK関係者は、名物支局長の更迭→退職の背景に、「海老沢氏がいなくなった今、居場所がなくなったではないでしょうか」と話している。
【「更迭かどうか、答えられない」】
NHK広報局では「6日発令でワシントン支局長から局付になるが、渋谷(放送センター)に戻るわけではない。今回の異動は定期異動に伴うもので、支局長以外の管理職の特派員は、すべて『局付』となる。更迭かどうか、退職するかどうかなどは、個々の人事に関するものなのでお答えできない」とコメントしている。
■手嶋龍一氏 北海道生まれ。慶応大学経済学部卒。昭和49年にNHK入局後、室蘭、横浜支局を経て、政治部記者として外務省、総理官邸、自民党を担当。62年からワシントン特派員となり、ホワイトハウスや国防総省などを担当、湾岸戦争などで活躍。ボン特派員、ハーバード大学国際問題研究所上級研究員を経て、平成9年からワシントン支局長。米同時テロ、イラク攻撃の際には連日中継に登場し、ファンサイトができるなど“時の人”となった。
外交、防衛問題に詳しく、主な著書は『一九九一年日本の敗北』『ニッポンFSXを撃て−日米冷戦への導火線・新ゼロ戦計画』。
ZAKZAK 2005/06/03