菅直人首相が定期検査中の中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)3号機だけでなく、4、5号機の運転を停止するよう要請した。原発か、安全か、エネルギーをどうするのか、議論を始めるべきだ。
五日、浜岡原発の緊急安全対策を確認に訪れた海江田万里経済産業相に対し、川勝平太静岡県知事は、中電が示した津波対策を「付け焼き刃」だと断じ、「3号機が動かなければ、4、5号機は自然死」と、中電と原発に対する懐疑をあらわにしたという。
浜岡原発は、いつ起きてもおかしくないと言われて久しいマグニチュード(M)8級の東海地震の想定震源域の上にある。揺れを生む断層面は、十五キロと直下の浅いところにある。東京や名古屋にも比較的近い。
福島第一原発の惨状を目の当たりにして、地元住民の原発に対する不安は高まる一方だ。本紙が静岡県内三十五市町の首長に対して実施したアンケートでも、十五市町の首長が、中電の対策が十分ではないとして、点検中の3号機再開や、計画される6号機新設への懸念を示している。
1号機(二〇〇九年運転終了、廃炉が決定)一九七六年稼働 出力五十四万キロワット▽2号機(同)七八年 八十四万キロワット▽3号機 八七年 百十万キロワット▽4号機 九三年 一一三・七万キロワット▽5号機 二〇〇五年 百三十八万キロワット−。
このうち、1〜4号機が、福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉、5号機だけが、新しい改良型である。住民や首長らが、強い不安を抱くのは、無理もない。中電が先月末、投資家に見通しを示すためとして発表した3号機の七月再開計画も「住民の安全が最優先されていない」と、反発を受けた。
浜岡が全面停止に至れば、全国にあと五十一基ある原発への影響は必至でもある。だがこれを脱原発の始まりと見るのは早い。中電の場合、仮に原発を止めても、供給力に余裕があるとの試算がある。しかし、風力や太陽光など、自然エネルギーによる代替網はまだ確立されていない。産業や市民生活への影響は少なくない。
これからの電力をどうするか、電気とどう付き合うか。それは、経済活動のあり方や私たち自身のライフスタイルをどう変えていくかということだ。
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