バブル景気が崩壊して20年以上が過ぎた。崩壊に至る過程で味わった右肩上がりの経済成長は二度とないことを反すうし続けた20年余でもあった
▼株や土地への異常な投機が生んだあぶくのような経済は消えても、マネーゲームは形を変えて生き残った。もうけた者が勝ちという風潮は、世紀が変わってむしろ強まった気がする
▼バブル景気の絶頂期は、財テクをしない経営者を無能とみなす経済評論家もいたことを思い出す。翻って、平成のマネー万能の空気は「お金で買えないものはない。心も買える。違ってますか?」と言う経営者を生んだ
▼その人、ライブドア(LD、現LDH)の堀江貴文元社長は「時代の寵児(ちょうじ)」ともてはやされた。旧時代の破壊者とされて若者の支持を集める一方で、被告と呼ばれる身にもなった。虚偽の情報を流して株価をつり上げた、などとして捕まった
▼あれから5年が過ぎた。一、二審の有罪判決に対し無罪を主張して上告していたが、最高裁は一昨日までに棄却した。懲役2年6月の実刑判決が確定する。この種の事件では普通は執行猶予が付く。犯罪の中身が普通ではなかったということだろう
▼健全な投資やモノづくりより「錬金術」が幅を利かした時代に、日本はどこまでサヨナラできたのか。拝金主義予備軍はあの手この手で出番をうかがう。「堀江被告はやりすぎただけ」といった感じの総括ではその根を断つのは難しい。
=2011/04/28付 西日本新聞朝刊=