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浜岡原発:全面停止・首相要請 「唐突」地元に戸惑い 歓迎と反対交錯 /静岡

 ◇「連絡なく」 国対応に不快感

 菅直人首相が、中部電力浜岡原発(御前崎市)の原子炉を全面的に停止するよう、中部電力に要請すると発表し、地元には歓迎、反対の両論とともに「唐突だ」とのとまどいが広がった。【仲田力行、平林由梨】

 休暇で長野県軽井沢町に滞在中だった川勝平太知事は「安全性確保に対する地元の予防を最優先した菅首相と海江田万里・経済産業相の英断に敬意を表します」とのコメントを書面で発表した。だが原発問題を担当する県の小林佐登志・危機管理監は「国から事前に連絡がなく、心外以外のなにものでもない」と国の対応に不快感を示した。県は週明けにも経産省原子力安全・保安院の担当者を県庁に呼び、経緯について説明を求める方針だ。

 東日本大震災を受けた緊急安全対策を講じていた中電に対し川勝知事は「津波対策は不十分で、付け焼き刃。とても安心できない」と反対の立場を示していた。

 浜岡原発を巡っては3号機が昨年11月から定期検査のため停止。中電は当初、今年3~4月に運転を再開する方針だったが、3月11日の東日本大震災の影響による東京電力福島第1原発の事故で、再開が延期され、再開の是非が焦点となっていた。だが国の判断は一足飛びにすべての原子炉を停止するという県には予想外の展開となった。

 ◇「こんな話いいのか」 御前崎市側「言葉が出ない」

 原発に経済を依存してきた御前崎市の石原茂雄市長は強く反発した。6日夜、自宅のテレビで浜岡原発の3、4、5号機停止を政府が決めたと知った。

 「話が唐突過ぎて言葉が出ない。昨日(5日)、経済産業省の海江田大臣と会って話したばかりだ。地元の意見をよく聞いて3号機の運転再開を判断するといっていたのに4、5号機も止めるなんて。こんな話があっていいのか」と絶句。「長期間停止した原発を再起動するのは本当に困難だ。まして東海地震を理由にするなら再び原子炉が起動することはないのではないか」と言葉を続けた。

 同市の今年度の当初予算は一般会計が約167億円。うち約73億円が原発交付金を財源にしている。市長は「国策で原発を受け入れてきた。公共施設もおかげで造れたが、これから原発交付金が入らないとなれば自治体財政は破綻する。菅総理は御前崎市に死ねというのか」と怒りが収まらない様子。

 中部電力は東海地震対策として1000ガルの地震加速度に耐えられるよう、各所の補強工事を済ませている。「安全と信じてきたのに、地震が心配だからとの理由ですべての原子炉を一度に止めるというのはあまりにもむちゃな話ではないのか」と悔しさをにじませた。

 一方、松井三郎・掛川市長は「安全対策を求めてきた立場としては政府の判断は妥当」と評価。ただ「地元自治体に連絡がなく、いかにも唐突で遺憾」と述べ、地元への配慮不足に不満を示した。【舟津進】

 ◇現地周辺市長、評価分かれる

 菊川市の太田順一市長は6日、文書でコメントを発表し、「市民の不安を受け止めての判断と思う。現時点では適切な判断と考える」とした。

 原発から20キロ圏内にある袋井市の原田英之市長は「首相の会見に先立って地元の意見を聞くという、地域主権の原則に反しているのではないか。代替エネルギーの問題をセットで考えなければならず、(要請に)異議がある」と述べた。市の一部が浜岡原発から30キロ圏内にある磐田市の渡部修市長は「首相の発言を重く受け止め、現実的な電力事情を勘案し、対応を慎重に検討していきたい」との談話を発表した。【野島康祐、樋口淳也】

 ◇廃炉求めていく--浜ネット事務局長

 菅首相の記者会見を受けて、「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」の鈴木卓馬事務局長は6日、「(浜ネットは)今まで地震対策中は浜岡原発を止めるべきだと主張してきた。その意味では首相の発言は評価すべきだ。ただし津波対策をやれば浜岡は大丈夫というわけではない。廃炉を求めてゆく」と述べた。【西嶋正信】

毎日新聞 2011年5月7日 地方版

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