2011年5月6日22時2分
菅直人首相の6日午後7時10分の記者会見の内容は、次の通り。
【冒頭】
国民のみなさまに重要なお知らせがあります。
本日、私は内閣総理大臣として、海江田経済産業大臣を通じて、浜岡原子力発電所の、全ての原子炉の運転停止を、中部電力に対して要請をいたしました。その理由は、なんといっても、国民のみなさまの安全と安心を考えてのことであります。同時に、この浜岡原発で重大な事故が発生した場合には、日本社会全体に及ぶ甚大な影響もあわせて考慮した結果であります。
文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定の東海地震が発生する可能性は87%と、極めて切迫をしております。こうした浜岡原発の置かれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を確実に実施することが必要です。
国民の安全と安心を守るためには、こうした中長期対策が完成するまでの間、現在定期検査中で停止中の3号機のみならず、運転中のものも含めて、全ての原子炉の運転を停止すべきだと私は判断をいたしました。
浜岡原発では、従来、活断層の上に立地する危険性などが指摘をされてきましたが、先の震災とそれに伴う原子力事故に直面をして、私自身、浜岡原発の安全性について、様々な意見を聞いてまいりました。その中で、海江田経済産業大臣とともに熟慮を重ねた上で、内閣総理大臣として、本日の決定をいたした次第であります。
浜岡原子力発電所が運転停止をしたときに中部電力管内の電力需給バランスが、大きな支障が生じないように、政府としても最大限の対策を講じてまいります。電力不足のリスクは、この地域の住民のみなさまをはじめとする全国民のみなさまがより一層、省電力、省エネルギー、この工夫をしていただけることで必ず乗り越えていけると私は確信をいたしております。国民のみなさまのご理解とご協力を、心からお願いを申し上げます。
【質疑】
――安全性の観点からということですけれども、中部電力はこれまで東海地震による安全性に問題はないとしてきて、国も容認をしてきたわけですけれども、なぜ、この期に至って突然、浜岡原発だけなのかというのは解せない。もう一つ。この夏場を迎えて、このように全部止めるということになると、供給量が下回ってしまうと思うが、その対策は具体的にどのようにお考えなのか。
ただいま申し上げましたように、浜岡原子力発電所が所在する地域を震源とする、想定される東海地震が、この30年以内にマグニチュード8程度で発生する、そういう可能性が87%と、文科省、関係機関から示されております。そういうこの、浜岡原発にとって、ま、特有といいますか、その事情を勘案して、国民の安全安心を考えた結果の判断、決断であります。また、電力不足についてのご質問でありますけれども、私はこれまでの予定の中でいえば、多少の不足が生じる可能性がありますけれども、この地域をはじめとする全国民の理解と協力があれば、あー、そうした夏場の、電力需要に対して十分対応ができる、そういう形が取りうると、このように考えているところであります。
――総理がなされた浜岡原発の停止要請ですが、これはどういった法律で、どういう根拠に基づく要請であるのか。根拠がない場合、中部電力側が断ってきた場合、総理はどのようにするつもりなのでしょうか。
ま、この要請に関して、後ほど海江田経済産業大臣から詳しくご報告をさせていただきますけれども、基本的には、この私がきょう申し上げたのは、中部電力に対する要請であります。法律的にいろいろな規定はありますけれども、指示とか命令という形は、現在の法律制度では決まっておりません。そういった意味で要請をさせていただいたということであります。えー、もう1点は何でしたっけ。
――もし中電側がこの要請を断ってきた場合、総理はどうされるおつもりなのでしょうか。
あの、ここは、十分にご理解をいただけるようにですね、えー、説得をしてまいりたい。このように考えております。
(千代内閣広報官「それでは、これで総理記者会見を終わります。どうもありがとうございました」)